間接工事費とは?直接工事費との違いや構成・計算方法

工事費の中でも様々な項目が存在するため、それらの費用を積み上げて計算していく必要があります。

間接工事費について詳しく理解していなければ、正確な積算を行うことはできません。

そこで、この記事では間接工事費について、直接工事費との違いや構成、計算方法など詳しく解説します。

積算に携わっている方や建設業界で働いている方はぜひ参考にしてください。

間接工事費と直接工事費の違い

「工事費」は「間接工事費」と「直接工事費」に分けられます。

建物そのものの施工ではなく間接的に必要な費用が「間接工事費」であり、一方で工事の施工に直接かかる費用は「直接工事費」です。

間接工事費と直接工事費について詳しく見ていきましょう。

間接工事費とは

それでは間接工事費について説明します。

間接工事費とは間接的に工事に必要となる費用全体のことです。

例えば、資材の運搬費用や足場の設置費用、近隣住民への防音対策なども間接工事費に含まれています。

直接工事費とは

次に直接工事費について説明します。

主に建築を行う上での「資材費用」や現場で作業する職人の給与などの「労務費」、施工に関わる「直接経費」などが直接工事費です。

現場で働く作業員の給与は直接工事費に含まれますが、間接部門の従業員の給与は間接工事費に含まれますので注意しましょう。

直接経費とは現場で使用する水道光熱費や電気代、使用する機械の修理や整備、ドライバーの給与などが含まれます。

水道光熱費や電気代の使用料金は直接経費、基本料金は間接工事費となる点にも気を付けておきましょう

直接工事費を計算する際には、国土交通省が発表している基準を参考にして、多くの企業が標準歩掛を定めています。

(参考:国土交通省 公共建築工事標準単価積算基準 令和4年3月24日制定

間接工事費の構成

間接工事費は「共通費」や「諸経費」とも呼ばれ、その構成は以下の3つに分けられます。

  • 共通仮設費
  • 一般管理費
  • 現場管理費

それでは詳しく見てみましょう。

共通仮設費

共通仮設費とは建物本体を建てるためには直接関係がないものの、工事を進めていくために必要な仮設物の設置や撤去のための費用となります。

つまり、工事が終われば撤去する養生や足場、現場事務所、看板などの費用です。

他には、荷物を吊り上げるクレーン車の費用、周辺警備を担うガードマン費用、工事の安全性を高めるための敷地の仮囲い費用、近隣への騒音対策での防音シートの設置費用や、落下防止のためのネットの設置費用などが共通仮設費に含まれます。

細かい項目に分けると、以下の8項目に分類可能です。

  • 準備費
  • 仮設建物費
  • 工事施設費
  • 環境安全費
  • 動力用光熱費
  • 屋外整理清掃費
  • 機械器具費
  • その他

共通仮設費については、以下記事で詳しく解説しています。

共通仮設費とは 積算において共通仮設費はどう計算する?内訳や計算方法を解説!

一般管理費

一般管理費は間接部門の給与やボーナス、役員報酬、事務所の維持費等、工事に直接は必要がない費用ですが、会社を経営していく上では大切な費用です。

例えば集客のための広告料や事務所の光熱費、租税公課なども一般管理費に該当します

また従業員の社会保険料の企業負担分の費用も含まれます。

現場とは違う場所で必要な費用なので分かりにくい部分があるでしょう。

企業を運営していくために必要な費用について、工事毎に負担を分担していることになります。

項目に分けると以下の4つに分けられます。

  • 人件費関連
  • 物件にかかる費用関連
  • 税金関連
  • その他

他社との価格競争に勝利するために工事費用を抑えようとすると、直接工事費は削るのが難しいため、一般管理費を削ろうという考え方が一般的です。

しかし、人件費を削ることにより一般管理費を削ると、現場で働く従業員の環境はより悪化すると考えられるため、国土交通省では一般管理費等率を定め、一定割合以上にしなくてはならないというルールを設けている点に注意が必要です。

建設業者が適切な利益を確保することで、従業員の給料が上がり、人が集まることで、労働環境が改善することも期待されています。

一般管理費については以下記事をご確認ください。

一般管理費 工事における一般管理費とは?2022年に改訂された一般管理費率と併せて解説

現場管理費

現場管理費は建築工事中に工事の現場管理に必要な費用で、現場経費とも呼ばれています。

例えば、現場を管理するための工事保険代や現場で作業をしている従業員の給与、近隣に住む方々への防音対策や補償費用などです。

さらには通信費や交通費、契約書の印紙代なども現場管理費に含まれます。

現場管理費が工事費の予算を越えてしまうと大幅な赤字工事の可能性が高まるため、現場監督は十分に気を付けて積算を行う必要があるでしょう。

現場管理費は17項目もあり、大変に思われるかもしれませんが、1つでも漏れてしまえば、積算金額に誤差が生じてしまうため、内容を理解しておきましょう。

現場管理費とは 積算で重要な現場管理費について内訳や重要性を解説!

間接工事費の積算における計算方法

間接工事費では必要な費用を一つずつ算出し積み上げていって計算する方法と、過去のデータを元にした比率を使って計算する方法があります。

具体的には以下の2つの方法にて間接工事費の計算を行います。

  • 国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」を利用する
  • 共通費の比率で計算する

それでは詳しく見て行きましょう。

国土交通省の「公共建築工事共通費積算基準」を利用する

まずは国土交通省が発表している公共建築工事共通費積算基準を用いて、計算する方法です。

工事の原価や直接工事費に一定の比率を掛けて計算し、それをひとつずつ積み上げていきます

工事の内容や規模によっても比率が異なるため注意が必要です。

項目が多くなるため抜け漏れがないように慎重に計算を行う必要があります。

効率と正確性を高めるためには積算ソフトを導入することも有効です。

便利で多機能な積算ソフトがありますので、無料で体験し、使いやすいソフトの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

soft1 積算ソフトはなにがいい?無料と有料それぞれのおすすめソフトをご紹介

共通費の比率で計算する

過去の実績などに基づいた共通費の比率により計算することができます。例えば共通費の中の、共通仮設費であれば以下のような計算方法となります。

共通仮設費=直接工事費×共通仮設費率+共通仮設費率に含まれない費用

共通仮設費に含まれない内容は別途計算し、加算しなければなりません。

しかし、共通仮設費にはいろいろな費用が含まれているため、おおよそで計上するための率分となっており、各積算基準に掲載されています。

直接工事費 共通仮設費率の適用範囲

  • 1千万円以下 4.34%~6.27%
  • 1千万円を超える場合 8.525×P-0.073279~12.311×P-0.073279

以下の式によって共通仮設費を計算することが可能です。

  • Kr=16.331×P-0.200×T0.421
  • Kr・・共通仮設費率(小数点第3位を四捨五入し、第2位止めとする)単位はパーセントです。
  • P・・直接工事費(千円)
  • T・・工期(ヶ月)

まとめ

この記事では間接工事費について詳しく解説を行いました。

間接工事費と直接工事費の違いや構成、計算方法などについて理解することで、積算の精度を高めることができます。

積算の精度が高くなれば、工事ごとに安定して利益を確保することが可能です。

また積算の効率化を検討する上で積算ソフトの導入は欠かせません。

使い勝手のよい積算ソフトを有効活用し、業務の効率化に取り組んでみてはいかがでしょうか。

積算に携わっている方や建設業界で働いている方はぜひ参考になさってみて下さい。