建設工事における積算では、直接仮設費も重要な項目です。
正確な積算を行うためにも、直接仮設工事の内訳や、「共通仮設工事」「間接仮設工事」との違いを知っておくことが重要となります。
この記事では、積算での直接仮設工事の概要や内訳から「共通仮設工事」「間接仮設工事」との違いまで解説します。
直接仮設工事とは?
直接仮設工事とは、作業や各工程を安全かつスムーズに始めるために必要な工事で、主に「足場」「養生」が該当します。
足場を組む際に不安定な場合は「梁枠」を設置したり、地面に凹みや開口部がある場合は壁を利用して「足場ブラケット」を使ったりします。
いずれも工事に直接必要なものですが、工事終了後には解体撤去される仮設物です。
直接仮設工事は解体撤去を前提にしていますが、建設工事での積算には欠かせません。
なお積算の項目としては、直接仮設となります。
共通仮設工事・間接仮設工事との違い
直接仮設工事の積算には、「共通仮設工事」「間接仮設工事」といった工事もあります。
共通仮設工事や間接仮設工事は、いずれも建物には直接関与しませんが、これらの工事なしでは、工事の仕上がりに影響する可能性があると言っても過言ではありません。
「共通仮設工事」「間接仮設工事」の違いは呼び名だけで、意味合いや内訳はほぼ同じです。
どちらも仮設工事の一種で、工事終了後には解体撤去されます。
「共通仮設工事」「間接仮設工事」の主な作業の内訳は以下の通りです。
- 仮設事務所
- 作業員休憩所
- 仮設トイレ
- 資材置き場
- バリケード
- 仮設水道・電気
- 防犯対策(カメラ・センサー・警備員)
また、工事を始める前に行われる「地鎮祭」「整地」なども、共通仮設工事・間接仮設工事に含まれます。
なお、共通仮設工事・間接仮設工事の費用は、間接工事費に該当しますので、しっかりとおさえておきましょう。
直接仮設工事の費用内訳11項目
直接仮設工事の費用内訳は以下の通りです。
- 水盛・遣方
- 墨出し
- 桟橋
- 仮設足場
- 現寸型板
- 安全設備
- 機械器具費
- 一般養生費
- 屋内整理清掃費
- 運搬費
- 発生材処分費
それぞれに詳しく見ていきましょう。
水盛・遣方
水盛・遣方は、工事を始める前に建物の正確な位置を決める作業です。
- 水盛:水盛水平器を使い水平に印をつける
- 遣方:建物を建てる周囲を杭と板で囲む
ちなみに、水盛・遣方の前には、建物を建てる位置の地面に目安となるように縄を張る「縄張り」という作業もあります。
縄張り後に水盛を行い、最後に遣方を行います。
墨出し
墨出しは、図面と照らし合わせながら、柱や壁などに印や線を付けていく作業です。
墨を含ませた糸を弾いて印をつける「墨つぼ」や、竹製の「墨ペン」など、昔から使われてきた道具から墨出しと呼ばれるようになりました。
墨つぼや墨ペンは現在でも使用されていますが、マジックや鉛筆を使う場合もあります。
桟橋
桟橋は、水上や水中での作業に使用します。
作業するための足場として以外にも、資材や機材の運搬のための通路としても必要です。
また、桟橋は資材や機材の仮置き場としても使用されます。
仮設足場
仮設足場は、手が届かない高所での作業に使用されます。
主にマンションやビルなどで必要とされますが、設置・撤去には専門業者が入るのが一般的です。
また、仮設足場にも種類があるため、現場に合ったものを選ぶ必要があります。
- 飛散防止ネット:ホコリや塗料が建物や周囲に飛散しないよう建物全体を覆う
- 侵入防止金網:工事現場に第三者が立ち入らないようフェンスとして設置する
- 水平ネット:安全対策として作業中の落下物をキャッチするためのネット
- 転落防止巾木:作業員を転落や落下物から守る
- 開口部養生:作業員が出入りする開口部に設置するコンパネや手すり
現寸型板
現寸型板は、図面では表せない複雑な場所を板で再現することです。
安全設備
安全設備は、安全に作業するために必要な設備のことです。
- 落下防止ネット:高さ2m以上での作業時に落下を防ぐために必須となる
- 親網:高さ2m以上での作業床を設置できないときの安全帯につなぐ綱
- 吊り足場:高さ2m以上での作業で落下を防ぐための床
- 防護柵:地面から7m・現場境界から5mの高さでの作業に必須となる
- 安全標識:現場で安全第一の作業を行うための安全指標を掲げた看板
機械器具費
機械器具費は、工事の施工に必要な機械器具の費用のことで以下が該当します。
- 電気設備や器具
- 測量機器
- 揚重機械や器具
一般養生費
一般養生費は、工事をする際に発生するチリやホコリ、塗料などが建物や周囲に飛散しないよう保護するシートやボートを設置する費用のことです。
一般養生費に計上される資材にも種類があり、現場によっても異なります。
主に使われる材料は、次の通りです。
- 養生シート・ネット:現場でメインとして使われる養生資材で防音シートも含む
- ブルーシート:建物の解体などで部分的に覆う際に使用される
- ビニールシート:透明な薄手のポリエチレン製で扉や窓に使われる
- マスカー:テープとビニールシートを一体化させたもの
- 養生テープ:粘着性が弱く剥がしやすいテープで養生シートなどを固定する
- カバー:車や室外機のカバーでホコリや汚れを防ぐ
また、砂ホコリを防ぐために水をまいたり、防音シートを取り付けたりするのも養生です。
基本的に一般養生費は、どの現場でも必ず発生する費用となります。
屋内整理清掃費
屋内整理清掃費は、工事で発生するゴミや廃材の清掃や後片付けにかかる費用のことです。
資材や整備の整理整頓にかかる費用も屋内整理清掃費となります。
また、屋内整理清掃費とは別に「屋外整理清掃費」の項目もあります。
工事中に敷地内や周辺の掃除や後片付けが該当しますが、積雪のある地域では除雪にかかる費用も整理清掃費としての計上が可能です。
運搬費
運搬費は、工事に必要な資材を現場まで運ぶのにかかる費用のことです。
また、工事に必要な重機の運搬(自走を含む)も「運搬費」に含まれます。
発生材処分費
発生材処分費は、工事に伴い発生したゴミを廃棄するのにかかる費用のことです。
ただし、工事で発生するゴミにもさまざまな種類があるため、中には産業廃棄物として処理しなければならないものもあります。
産業廃棄物の処分は、中間処理場へ運ぶ必要がありますが、工事に伴い発生したゴミは中間処理場までの運搬費も計上が可能です。
家の立て替えやリフォームで発生した部材を、発生材として扱う場合があるものの、場外処分は費用が高額になる傾向が見られます。
まとめ
この記事では、積算での直接仮設工事がどういうものか、内訳や共通仮設工事との違いについて解説してきました。
直接仮設工事にかかる費用は、建設工事における積算では重要な項目です。
また、直接仮設工事費の内訳にもそれぞれに項目があるので、こうした工事は正確に把握しておきましょう。