建築の仕事をしていると工程表について目にする機会は多いでしょう。
しかし、工程表にも複数の種類があることを知っているという方は意外と少ないかもしれません。
本記事では、さまざまある工程表の中でも、特に「バーチャート」を利用した工程表について、特徴とメリット・デメリットなどお伝えしていきます。
この記事の内容
バーチャート工程表とは
バーチャートは縦軸に「作業項目」を横軸に「時間」をとり、各作業の開始~終了を一目で分かるように表に示したチャートのことです。
バーチャート工程表は、上記バーチャートを用いた工程表で、多くの建築計画で採用されています。
実際に建築の現場で目にしたことがある方もいらっしゃるでしょう。
バーチャート工程表と他の工程表との違い
工程表には、バーチャート以外にもいくつかの種類があります。
具体的には以下のようなものです。
- ガントチャート
- グラフ式
- ネットワーク式工程表
- 工程管理曲線
以下、それぞれ見ていきましょう。
ガントチャート
ガントチャートは、バーチャートと見た目は似ていますが、横軸に時間ではなく進捗率を採用したものです。
各作業の進捗率を一目で確認できるため、複数の作業を同時に進めていても把握しやすいといったメリットがあります。
一方、バーチャートと比べると作業ごとの関連性を把握しづらい点がデメリットです。
グラフ式
グラフ式の工程表は縦軸に進捗率、横軸に日数をとったものです。
バーチャートとガントチャートのいいとこ取りをした工程表だともいえます。
各作業の関連性と進捗率を把握しやすいというメリットがある一方、バーチャートやガントチャートと比べると一目で内容を把握しづらいという点がデメリットとなります。
ネットワーク式
ネットワーク式の工程表は各作業の関連性を記号を使って表現したものです。
表記のルールは以下の通りです。
- 「〇」と「→」を使って工程を表現
- 「→」はアクティビティと呼ばれ、上に工事内容、下に工期を記載
- 「→」の先には「〇」を記載
- 「〇」はイベントと呼ばれ、中に整数を記入
作業ごとの関連性や流れを理解しやすくなっていますが、一方で作成と内容の理解に専門知識が必要とされるといったデメリットがあります。
工程管理曲線
工程管理曲線は縦軸に進捗率、横軸に日付を取った工程表。
出来高累計曲線、バナナ曲線などとも呼ばれます。
工事全体の進捗状況を把握できますが、各作業の進捗を確認できません。
バーチャートやガントチャートなど各作業の状況が分かる工程表と併せて活用するとよいでしょう。
バーチャート工程表を活用するメリット
他の工程表と比較したときのバーチャートのメリットには以下のようなものがあります。
- 比較的簡単に作成できる
- 視覚的に理解しやすい
比較的簡単に作成できる
バーチャートは縦時期に作業名、横軸に日数を取り、棒状のバーを使って工程表とするものです。
例え初めてバーチャートを見るという方がいたとしても、簡単に理解できるものになっており、また、工程表自体の作成も比較的簡単です。
工程表作成の経験が浅い方でも、それほど苦労することなく工程表を作成できるでしょう。
視覚的に理解しやすい
バーチャートは作業一覧とそれぞれに必要な日数など視覚的に理解しやすくなっています。
設計する専門家が理解しやすいのはもちろん、現場で作業する方や、専門知識のない施主の方などでも、工程表を見るだけでおおよそ理解できるものになっているのです。
他の、専門知識のいる工程表と比べると、この点は大きなメリットだといえるでしょう。
バーチャート工程表を活用するデメリット
一方、バーチャートのデメリットとしては以下のようなことが挙げられます。
- 別の工程との関連性を把握しづらい
- クリティカルパスを把握しづらい
それぞれ解説します。
別の工程との関連性を把握しづらい
バーチャートは作業一覧とそれぞれの進捗度を把握するのには向いているでしょう。
一方で、作業の関連性の把握には向いていません。
工程表を作成しても、実際の工事が工程表通りに進まないということは起こりうるもの。
複数ある作業のうち、1つの作業が送れた場合、その送れが他の工程に及ぼす影響など、バーチャートでは把握しづらいのです。
特に工期が長かったり、工事の種類が多かったりする工事の場合にはバーチャートは不向きだといえるでしょう。
クリティカルパスを把握しづらい
クリティカルパスとは工期を遵守するために絶対に遅らせることのできない作業経路のこと。
例えば、ネットワーク式であれば「ある工程が終わらなければ次の工程に進めない」という特徴があり、クリティカルパスを把握しやすくなっています。
一方、バーチャートは作業を一列に並べているだけのため、クリティカルパスを把握できないのです。
こうした特徴から、バーチャートは作業の量が比較的少なく、期間の短い工事に向いているといえます。
バーチャート工程表の書き方
最後にバーチャート工程表の書き方をご紹介します。
具体的な流れは以下の通りです。
- 作業内容を把握する
- 手順を決定する
- 工事期間を決定する
- 資材の配分を決定する
- 工程表に書き起こす
①作業内容を決定する
まずは工事に必要な作業内容をすべて洗い出しましょう。
作業の内容に漏れがあると、正確な工程表を作成できません。
まずは思いつく限りの作業内容を書きだすことが大切です。
②手順を決定する
次に、各作業の施工手順を決定します。
この際、付箋やエクセル、工程管理システムなどを利用すると便利です。
③工事期間を決定する
施工手順を決定したら、各作業の工事期間を決めます。
同じ工事であっても現場の状況や季節などさまざまな条件により工事期間に変動が起こる可能性があります。
バーチャート工程表作成の中でも、経験が要される部分だといえるでしょう。
経験が浅いうちは、先輩や上司など経験豊富な方に相談しながら進めることが大切です。
なお、実際に工事が始まると天候や現場でのトラブルなど、工程通りに進まないことは起こりうるものです。
そうしたイレギュラーなことが起こっても問題のないよう、ある程度余裕を持たせることも考えるとよいでしょう。
④資材の配分を決定する
工事期間が決まったら、機材や協力業者など資材の配分を決めていきます。
複数の作業で同じ機材や強力業者を使う場合など、重なってしまわないよう配分することが求められます。
⑤工程表に書き起こす
上記の作業が済んだら、決定したことを工程表に書き起こしていきましょう。
なお、まだ経験が浅いうちや、工程表に書き起こす前に上司や先輩などに確認、承認を得ることが大切です。
まとめ
バーチャート工程表について、他の工程表との違いやメリット・デメリットなどご紹介しました。
バーチャートは視覚的に理解しやすく、比較的簡単に作成できるといったメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
工事を進めるにあたり、どの工程表を用いるかの選択は組織で決められているのが普通です。
バーチャートを用いることが決まっている現場の場合、その特徴をよく理解したうえで、作成することが大切だといえるでしょう。