工事を成功させるためには適正価格での見積が欠かせません。そこで正確な市場単価を把握するために用いられるのが物価資料。
物価資料は、積算の手法でも活用され、多くのシーンで利用されます。
そこで本記事では、実際に積算業務で使用されている物価本を紹介します。
この記事の内容
物価資料と市場単価とは
物価資料と市場単価とは何か、それぞれについて詳しく紹介していきましょう。
物価資料
物価資料とは、専門の会社による実態調査が行われその結果を1冊にまとめたものです。
調査は全国の主要となる都市で毎月行われています。
物価資料を確認することで、工事の種類ごとに市場単価の把握が可能になります。業界や工事ごとの項目に分類して掲載されているため、とても確認しやすいです。
工事費の見積を適切に行うためには必ず確認してください。
なお、経験豊富な積算士の中には、設計の際に「この構造と仕様であれば、坪はこれくらいの予算感だろう」と値踏みして予算決めをする方もいるでしょう。
ですが実際にいくらというのは積算をして、物価資料から単価を拾って算出する必要があります。
そこで注意すべき点は、物価資料の内容が毎回変わること。市場単価変動の影響を受けることにより、内容にもその都度変化が加えられます。
一度の確認で済ませず、物価資料は毎月確認しましょう。
市場単価
市場単価とは、工事施工の1つを単位とし、実際に民間同士で取引されている市場価格のことを指します。
材料費や労務費その他諸々の内訳はなく、すべてまとめて市場単価が出されます。内訳がないため労務費が高騰しても市場単価は滅多に変化しません。
なお国土交通省により「積算には市場単価を用いること」が決められているため、積算業務を行う方は必ず確認が必須となります。
先ほど紹介した物価資料を確認し、市場単価を把握することで正確な積算が行えます。
積算では物価資料と市場単価方式が用いられる
積算では市場単価方式を使用しますが、そこで物価資料が用いられます。
市場単価方式とは、市場単価をもとに積算を行うこと。従来の歩掛を用いた複合単価を使用せず、市場の取引価格を把握した市場単価が使用されます。
市場単価方式を活用するメリットは以下のとおり。
- 積算の機動性を確保できる
- 価格決定要因をより円滑に予定価格に反映できる
- 元請負と下請間の取引価格の適正化が図れる
- 積算業務の効率化が期待できる
- 最新の技術や工法に対応でき積算の円滑化が期待できる
市場単価方式の導入により、歩掛を用いた積上げ計算が必要ありません。発注者側が行う積算業務の効率化につながるうえ、コストの縮減も図れます。
建設業界における積算で使用される物価資料
積算における代表的な物価本は、大きく以下の2冊です。
- 建設物価調査会|建設物価
- 経済調査会|積算資料
建設物価調査会|建設物価
物価本の1冊目は「建設物価」です。
建設物価は、建設物価調査会が毎月発行している総合物価版です。
全国各都市で建設工事で使用する各種資機材の価格や賃貸料金、工事費を調査し、その結果をまとめたものとなっています。
調査結果による市場単価だけでなく、建設業界に関しての記事や統計なども掲載しているのも特徴です。
建設業界に勤める方であれば、毎月手に取るべき1冊となっています。
経済調査会|積算資料
物価本の2冊目は「積算資料」です。
経済調査会が、資材の価格から労務費、賃料などを調査し掲載しています。
また、取引の数や都市別に掲載しているのも特徴です。
主な掲載内容は以下のとおりです。
- 経済統計
- 価格の推移
- 寄稿文(建設行政)
- 建設情報で話題となっている内容の解説
積算資料を確認するおすすめのタイミングは、公共工事設計労務単価が改定されたときと、燃料費などの単価変動が大きかったとき。
物価が安定していることから変動はあまり起きませんが、積算資料のチェックは毎月行うのが理想的です。
公共工事設計労務単価の改定は、国土交通省のホームページから確認ができるので見落とさないようにしましょう。
まとめ:積算で物価資料を用いて市場単価方式を導入しよう
積算ではまず、物価資料で毎月公表される市場単価の把握から行いましょう。
市場単価の把握が日々の積算業務に活かされます。
その結果、適正価格での工事費見積が実現するのです。
市場単価を把握して積算に市場単価方式を導入することで、積算業務の効率化などのメリットを得ることもできます。
ぜひ本記事を参考にして、物価資料を用いて積算に市場単価方式を導入してください。