建設業法が改正され、2023年に施行されるのをご存じでしょうか。この記事では、建設業法の改正内容についてご紹介します。改正内容を知らないと業務への支障が出かねません。
そもそも建設業法とはどのような法律なのか、改正される背景も合わせて解説します。また、建設業法は2020年にも改正されており、以前と変わった点が多数あるため、詳しくお伝えしていきましょう。
この記事の内容
建設業法とは
建設業法とは、建設業を行う際に守らなくてはいけないさまざまなルールを定めた法律です。主に、建設業を営む者の資質の向上や、建設工事の請負契約の適正化を図ることを目的として定められています。
なお、建設業法の対象となる工事は、以下の29業種。
- 土木
- 建築
- 大工
- 左官
- とび・土工
- 石
- 屋根
- 電気
- 管
- タイル・れんが・ブロック
- 鋼構造物
- 鉄筋
- 舗装
- しゅんせつ
- 板金
- ガラス
- 塗装
- 防水
- 内装仕上
- 機械器具設置
- 熱絶縁
- 電気通信
- 造園
- さく井
- 建具
- 水道施設
- 消防施設
- 清掃施設
- 解体
上記の工事を実施するにあたって、建設業法を遵守する必要があります。
建設業法改正の目的
建設業界では、限りある人材の有効活用を図りつつ、将来にわたり長期的な担い手の確保や育成を図ることが大切になっています。
そんな建設業法が改正される主な目的は以下の3つ。
- 働き方改革の促進
- 建設現場における生産性向上
- 持続可能な事業環境の確保
働き方改革の促進
建設業界では、長時間労働と人材不足が問題とされてきました。
厚生労働省の調査によると、建設業の総実労働時間は164.7時間と全産業平均よりも30時間以上多い結果になりました。
このような長時間労働や過酷な労働環境を改善するために「工期の適正化」や「社会保険加入の義務化で待遇改善する」などの改正が行われました。
建設現場における生産性向上
建設現場では常に人材不足のため、少ない人出でも効率的に作業し、生産性を向上させるよう取り組んでいます。新技術の導入を試みる中小企業を応援するなどの支援も始まっています。
「配置技術者の専任基準の緩和」や「施工の効率化促進のための環境整備」を行うよう改正し、生産性向上を図っています。
持続可能な事業環境の確保
持続可能な事業環境の確保も重要視されています。現在、建設業に従事する20代の人が少なく、将来的に人手不足が加速すると予想されています。
そのため、「後継の人材育成」や「事業の継承を円滑化する」等の目的のため建設業法は改正されています。
【2023年施行】建設業法の改正ポイント
2023年より改正されたのは以下の金額です。これらの内容に関してわかりやすく解説します。
現行 | 改正後 | |
下請代金額の下限 (特定建設業の許可や監理技術者の配置・施工体制台帳の作成を要する) |
4000万円 (6000万円) |
4500万円 (7000万円) |
主任技術者や監理技術者の専任を要する請負代金額の下限 | 3500万円 (7000万円) |
4000万円 (8000万円) |
特定専門工事の下請代金額の上限 | 3500万円 | 4000万円 |
特定建設業許可が必要な工事の範囲拡充
まずは、特定建設業の許可が必要な工事範囲の拡充です。
そもそも、発注者から直接建設工事を請けた際、下請人に施工させる額の合計額が4,000万円以上の大きな工事は特定建設業許可が必要でした。
しかし、改正後は、下請契約の代金が4,000万円から4,500万円に変更されます。この変更によって、特定建設業許可の持っていない建設業者も下請け企業へ4,000万円以上の施工依頼を行うような規模の多い工事が可能になりました。
また建築工事業である場合は、6,000万円から7,000万円に引き上げられています。この海底変更によってより多くの企業が規模の大きな建設作業や各種工事を行なえるようになり、仕事の幅が広がるでしょう。
配置技術者の専任基準の緩和
建設業法には建設業許可業者は、請け負う現場に主任技術者や監理技術者を配置しなければならないと定められています。
加えて、主任技術者や監理技術者は請負金額3,500万円以上の工事の場合、その現場の専任でなければならないと定められています。つまり、他の現場を掛け持ちしてはいけませんでした。
今回の改正で、この基準となる請負金額が3,500万円から4,000万円に引き上げられました。建築一式の場合は7,000万円から8,000万円に変更されます。
これにより、配置技術者が現場を兼務できる工事の範囲が広がり、専任基準が緩やかになりました。
特定専門工事の下請代金額の上限拡大
特定専門工事とは、土木一式工事または建築一式工事以外の建設工事のことで、かつ元請が締結した下請契約の請負代金総額が4,000万円以上の工事のことを指します。
しかし、改正後は4,000万円以上ではなく4,500万円以上と変更されます。特定専門工事は2022年の改正後、主任技術者配置免除の対象になっています。
そのため、専任者などの技術者を配置することが負担だった会社にとって、技術者を配置せずにできる仕事の範囲が拡大したといえます。
【2020年施行】建設業法の改正ポイント
なお、2020年にも建設業法は改正され、新たな規則が施行されました。改正された内容やポイントについて振り返りましょう。
工期の適正化 | ・著しく短い納期の禁止された ・長時間労働を規制する目的 ・反した契約を結んだ業者には勧告 ・悪質な場合は企業名の公表などの罰則もある |
工期に影響を及ぼす事項の情報提供義務 | ・地盤沈下などの地中状態を起因とするものや騒音配慮など周辺の環境に関するもの ・工期に影響を及ぼすものを報告することであらかじめ対策が可能になり、円滑に作業が進むと期待されている |
請負契約書に「工事を施工しない日・時間帯」を追加 | ・休日等を設定することは義務ではない ・設定した場合は請負契約書に記載することで効力を発揮し、過剰な労働環境改善に繋がると期待されている |
社会保険の加入義務化 | ・個人事業主であっても従業員が5名以上いれば社会保険に加入しなければいけない ・待遇の改善目的 |
下請代金のうち「労務費相当分」の現金払い義務化 | ・下請代金のうち労務費に相当する分については現金で支払うことが義務化された ・下請業者が労働者への支払いを滞らせず受注できる環境を整えるため |
認可行政庁が建材製造業者へ勧告可能 | ・資材の欠陥により生じた施工不良について、改正前は設業者にしか改善などの指示を出せなかったが、改正後は資材メーカーに対しても改善勧告や命令を出せるようになった ・建設業者の責任負担改善目的 |
下請業者の元請による違法行為の密告を保護 | ・請負代金を不当に低くする、期間内に支払わないといった違法行為を下請業者が行政庁などに通報した場合、下請業者を不利に扱うことを禁じる ・立場が弱かった下請け業者を守る目的 |
監理技術者の兼務可能 | ・現場に「技師捕」を置けば1人の管理技術者が最大2つの現場を兼任することが認められるように変更 ・人材不足の改善目的 |
要件を満たせば下位業者は主任技術者の配置不要 | ・「特定専門工事」については当事者が合意すれば、一時下請業者のみが主任技術者を配置し、二次以降の下請業者は配置しなくてよいと変更 ・人材不足の改善目的 |
経営業務管理責任者要件の変更 | ・経営業務管理責任者になるための条件が緩和 ・人材不足の改善目的 |
事業承継における合併・譲渡の仕組み変更 | ・相続の場合は相続発生から30日以内に認可の申請をすることで営業継続が可能になった ・相続以外では事前認可ができるように変更 ・事業を継承する手間の軽減目的 |
人材不足や労働環境改善のために多くの建設業法が変更されています。
建設業法改正後の注意点
建設業法改正後に注意しなければいけない点が3つあります。
- 管理者の途中交代は最小限にすること
- 改正前に作成した施工体制台帳及び施工体系図は保管しておく
- 建設工事の現場に管理者を記載した標識を掲げる
改正後に注意すべき点を詳しく紹介していきましょう。
管理者の途中交代は最小限にすること
まず、施工管理を行う監理技術者から主任技術者への工期途中での交代は、必要最小限にしなければいけません。というのも、建設工事の円滑な作業を阻害するおそれがあるためです。
建設業法改正の施行後、工期途中において途中交代を行う場合、請負契約の当事者間で協議して行なうことになります。つまり、発注者から直接工事の依頼を受けた場合は、発注者と相談し了承得てから管理者の交代を行います。
また、管理者の交代が必要な場合は工事の区切りがいい時期に行うなど、工夫し工事の進捗状況に影響が出ないようにするべきでしょう。適切な時期に交代できない場合や工事の規模が大きいときは、一定期間だけ管理者2人体制で行うなど引継ぎをしっかりすることも可能です。
改正前に作成した施工体制台帳及び施工体系図は保管しておく
改正後は、金額要件において施工体制台帳の作成や備置義務及び施工体系図の作成、掲示義務の適用外となる工事については掲示が不要です。
しかし、2022年12月31日までに作成した施工体制台帳及び施工体系図は、建設業法(1949年法律第100号)第40条の3に基づき、引き続き営業所ごとに保存する必要があるため注意しましょう。
公共工事については、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(2000年法律第127号)第15条の規定に基づき、下請代金額に関わらず施工体制台帳の作成・備置き及び施工体系図の作成・掲示が必要されています。
2024年から保管や作成が必要なくなるからと言って、処分しないようにしましょう。
建設工事の現場に管理者を記載した標識を掲げる
建設業法第40条に基づき、発注者から直接建設工事を請け負った建設業者は、建設工事の現場の見やすい場所に当該建設業者が配置した主任技術者や監理技術者の氏名、専任の有無等が記載された標識を掲示しなければいけません。
これは、責任者や管理者を明らかにするためであり、工事内容の透明化に繋がるでしょう。
また、修正が必要となった場合は速やかに修正しなければならないため注意が必要です。
まとめ
建設業法の改正に関して解説しました。労働環境の改善のため、専任技術者の配置緩和など改正されています。
改正後に責任者等を記載し、表示しなければいけないなどのルールもあるため注意が必要です。建設業法の改正について理解し、施行開始したとき戸惑わなくていいよう準備をしておきましょう。