建設業法では下請会社を守るために見積期間が設定されています。
見積期間について、具体的な日にちの数え方や見積もりに明示が必要な項目について説明します。
日頃から見積作成に従事している方も改めて見積期間について内容を詳しく確認してみてはいかがでしょうか。
この記事の内容
建設業法に規定のある見積期間とは?
建設業法の第20条で見積期間について明確に定められています。
大切なことですので、知らない間に法令違反を犯していたという事が無いように、改めて内容を理解して、正確な知識を身に付けておくことが重要です。
見積期間についておさらい
それではまず見積期間とはどのような意味なのか確認しましょう。
見積期間とは、下請会社が発注者や元請会社から見積の依頼を受けてから、作成し交付するまでの猶予期間のことです。
つまり、下請会社である建設会社が正確な見積を作れるように十分な期間が確保されているのです。
建設業法によって期間が定められており、「明日までに」や「なるべく早く」というような、下請会社を急がせることや、曖昧な依頼をすることは禁止されています。
見積期間が定められている理由
明確に見積期間が定められている理由について説明します。
その大きな理由は、下請会社が適正に見積を行い、契約を検討する為に十分な機会を与えることで、下請会社と元請会社がお互いに納得が行く内容で契約をできるようにするためです。
つまり下請会社が不利な条件で見積をしたり、急かされるままに契約をしたりすることが無いように配慮されているのです。
そのため期間内に「見積を早く出して欲しい」と急がせると違反行為となりますので、注意しましょう。
見積期間の日数
見積期間は工事の請負契約金額によって異なっています。
見積期間の日数について以下の内容を中心に解説します。
- 建設業法施行令第6条 見積期間
- 見積期間の数え方
- 見積期間に土日など休日は含む?
- やむを得ない事情がある場合は見積期間の短縮ができる
それでは詳しく見ていきましょう。
建設業法施行令第6条 見積期間
建設業法施行令第6条にて見積期間が定められています。
工事の請負金額によって期間が定められており、当然ながら金額が大きな工事ほど、期間が長くなっています。
詳しくは下表の通りです。
工事請負金額 | 見積期間 |
---|---|
500万円未満 | 1日以上 |
500万円以上、5000万円未満 | 10日以上(やむを得ない場合は5日以上) |
5000万円以上 | 15日以上(やむを得ない場合は10日以上) |
この期間は工事の請負金額に応じて定められている、最低限設けなければならない猶予日数ですので、より長くなる分には問題ありません。
見積期間の数え方
次に見積期間の数え方について説明します。
元請会社から下請会社へ見積を依頼した次の日が1日目とカウントされます。
見積を依頼した当日は見積期間にカウントされないため、注意しましょう。
具体的に考えてみると、例えば工事請負金額が400万円程度の見積を12月1日に依頼した場合は翌日が1日目となるため、12月2日以降が提出期間となります。
見積期間に土日など休日は含む?
土曜日や日曜日などの休日は見積期間に含めなくても大丈夫です。
契約について十分に検討できるように期間を設けていますので、土曜日や日曜日を含めずにカウントしても問題ありません。
基本的に営業日を中心に考えてよいでしょう。
やむを得ない事情がある場合は見積期間の短縮ができる
やむを得ない場合には見積期間を短縮することができますが、ケースバイケースですので、やむを得ないと判断される事情なのか内容についてはその都度確認する必要があるでしょう。
具体的には、早急に工事を行う必要がある場合、地域の方々との調整に時間がかかり工事発注の時期が遅くなってしまった場合、国や地方自治体の補助金の決定が遅くなった場合などが想定されます。
明瞭な理由がなければ短期間での見積提出を求めることができないため、注意しましょう。
しかし、やむを得ない場合には、期間が短くなることもあり得るという事を認識しておくことが大切です。
建設業法が定める見積提出時に明示が必要な項目とは
元請会社は下請会社に見積を依頼する際にどの範囲の見積を行えばよいのか、といった条件や具体的な工事の内容など詳細に伝える必要があります。
下請会社は依頼を受けた内容に基づいて見積を作成します。
見積を好き勝手な内容で作成して良い訳ではなく、決まった項目を記載していくことが重要です。
具体的な内訳や項目について、詳しく見ていきましょう。
項目の内訳
見積を正確に行うために、下請会社に明示すべき項目は以下の通りです。
以下の内容について、契約までの間に下請会社に伝えていなかった場合、元請会社は建設業法第20条第4項に違反することになりますので、非常に重要な事項です。
元請会社は以下の内容について、確定してない事項があれば、下請会社へその旨を説明しなければなりません。
項目の内訳 | 詳細 |
---|---|
工事名称 | 公共工事であれば発注者から指定された名称を記入します。 |
施工場所 | 施工する場所を記入します。固有名詞や住所で記入することが一般的です。 |
設計図・関連書類 | 必要な数量が拾えるように、各種図面など添付します。 |
下請工事の工程や全体工程 | 発注工事の工程や全体の工程について記入します。 |
見積を行う条件 | 工事に含める範囲や含めない範囲を定め、提示が必要です。 |
施工環境、制約に関する事 | 埋設物の有無や地盤の強度に関すること、また騒音など周辺環境に配慮しなければならないことを記入します。 |
材料費や労働災害防止対策 | 下請会社と元請会社で費用をどのように分担するか記入します。 |
建設業法令遵守ガイドラインでは下請会社と元請会社の関係において、どのようなことが違反になってしまうのか詳しく示してあります。
下請会社と元請会社が法令をしっかりと遵守した上で対等な立場で取引できるよう、今一度内容について確認しておきましょう。
見積の内訳も明示する必要がある
下請会社は見積を完成させ提出する際には内訳も記入する必要があります。
具体的には工事の種別ごとの材料費、労務費その他経費の内訳を明らかにし、項目ごとに数量や単位を記入して、金額を明記しなければなりません。
工事一式などの簡略的な記載方法は認められませんので、注意が必要です。
必須の記載事項が漏れることがないように標準見積書を使用することをおすすめします。
また内訳には法定福利費を必ず記載しましょう。
企業が義務として負担しなければならない費用の事を法定福利費と呼びます。
この法定福利費は健康保険や社会保険、年金保険や雇用保険などの、企業が負担する保険料のことです。
十分に予算を確保し、現場で働く労働者が間違いなく保険に入れるようにするため、法定福利費を内訳として記載する必要があります。
なお、法定福利費については、以下記事で詳しく解説しています。
まとめ
この記事では見積期間について、具体的な日にちの数え方や見積に明示が必要な項目について詳しく説明しました。
見積期間について厳しく建設業法で定められているのは、下請会社を守るためであり、下請会社を守ることで、現場で働く労働者や発注者への被害を防ぐことに繋がっていきます。
見積期間について、十分な知識を持っていなければ、建設業法に違反することもありえるでしょう。
日頃から見積作成に従事している方も改めて内容を詳しく確認しておいてはいかがでしょうか。