いつも積算に関わる方にとって、実行予算とは聞き慣れた言葉でしょう。
企業が利益を確保する上で、実行予算や積算の精度がとても重要になります。
この記事では実行予算について、見積もりや積算との違いや、実際にどのように作るのか分かりやすく解説します。
この記事の内容
実行予算とは?
実行予算とは建設現場で発生する費用を予想して作られた予算です。
実行予算を組む目的や、見積もりや積算との違いなど、詳しく解説します。
そもそも実行予算とは?
実行予算はどのような材料を使い、どのような方法で、どのくらいの期間を掛けて工事を行うのか示し、発生する金額を算出します。
建設の仕事で全く同じ仕事は2度とありません。
そのため、一つ一つの工事においてコスト管理を慎重にしなければ、利益が出なかった場合に理由を明らかにすることができません。
そのような状況に陥らないために作るのが実行予算です。
実行予算を組む目的
次に実行予算を組む目的について解説します。
主に以下の3つです。
- 現場ごとの費用を理解する
- 実行予算と実績を比べる
- コスト管理への意識を高める
それでは具体的にみていきましょう。
現場ごとの費用を理解する
実行予算を組むことで、現場ごとにどのくらいの費用が掛かるのか理解することができます。
そして、赤字になりそうなリスクもある程度判断することが可能です。
実行予算と実績を比べる
実行予算を組むことで、事前に予想していた費用と実際に発生した費用の差額を比べることが可能です。
そして、差額が生まれた原因について調査を行い、次の工事では改善策を講じることで、精度を高めていくことができます。
コスト管理への意識を高める
実行予算を組むことが多い工事責任者には、コストマネージメントについての高い意識が求められます。
自らが作成した実行予算との差異が発生しないよう、現場のコストを慎重に把握する能力が高まることが期待できるでしょう。
見積もりや積算、基本予算と実行予算の違い
見積もり、積算、基本予算は、実行予算と似たような意味に感じられますが、正しく使い分けられるよう、確認しておきましょう。
それでは、「見積もり・積算」「基本予算」と「実行予算」の違いについて詳しく解説します。
見積もりや積算と実行予算の違い
工程の流れは積算、見積もり、実行予算の順となります。
まずは積算を行いますが、積算とは工事の図面などから、人件費、材料費、経費など工事にかかる費用を拾い上げることです。
そこから自分たちの利益を加算して、依頼主へ提案する金額が見積もりです。
一般的に依頼主から合意が得られれば見積額にて工事を請け負うこととなります。
そして、見積もりから工事現場で発生する金額を計算したものが実行予算です。
見積もりから実行予算を引いて、残った額が企業にとっての粗利額になるため、計算の元となる積算をいかに正確にできるかが利益を残すためのポイントとなります。
積算・見積もりの基本については下記の記事も参考にしてみてください。
積算と見積もりの違いとは?積算の流れやポイントと併せて解説基本予算と実行予算の違い
基本予算とは企業の会計期間に合わせて組まれる予算です。
そのため多くの企業は1年ごとに予算の調整を行っています。
一方、実行予算は工事現場ごとに組まれる予算で、基本予算に比べ高い精度が求められます。
工事一件ずつの利益の積み重ねがその会計期間の利益となりますので、現場ごとに実行予算を作り、コストの把握を慎重に行うことが重要です。
実行予算の作成手順
どのように実行予算を組むのか、その流れについて解説します。
具体的な流れは以下の通りです。
- 作成者を明確にする
- 見積もり書を元に組み換えする
- 調整と決済をする
それでは詳しく見ていきましょう。
作成者を明確にする
まず初めに実行予算を組む人を決めることが大切です。
多くの場合は、工事の責任者や現場監督が担当します。
現場の責任者が作ることで、当事者としてコストを抑制する意識や利益を守る意識を高めることを求められています。
現場から離れた人が作る実行予算は精度が低くなることも考えられるでしょう。
見積もり書を元に組み換えする
見積もり書を元にして組み換えることで、実行予算を作ります。
その方法は以下の通り大きく3つあります。
- エクセルで実行予算を作成する
- システムを利用して、実行予算を作成する
- 調整と決済をする
エクセルで実行予算を作成する
エクセルを使い、実行予算を作ることが可能です。
しかし、ゼロから自分で作成するには、任意の数式を組み込むための予算に関する知識や、更にはエクセル操作のスキルが必要となるため、不慣れな人にとっては正確な実行予算表を作ることは厳しいでしょう。
WEB上には無料のテンプレートなどもありますので、ぜひ利用を検討してみましょう。
システムを利用する
または、工事管理システムで実行予算を作ることができます。
工事管理に特化したシステムを活用する方法です。
システムにある様々な機能を利用することで、実行予算を作った後の業務も効率的に行うことが可能です。
また、社内の他部署のメンバーと情報を共有しながら、業務を進めていくこともできます。
調整と決済をする
実行予算を作った後は、設計や工事など社内の部署へ回覧し、調整と決済が必要です。
関連する部署へ回覧し確認を行うことで、予算の精度が高くなります。
また情報を共有することで、その後の工事において当事者としての意識の高まりが期待できるでしょう。
実行予算の注意点
実行予算を組む際に注意すべき点がありますので、解説します。
具体的には以下の3つです。
- 設計数量と所要数量の違いを理解する
- 実行予算と差異が発生しやすい項目を確認する
- 材料ロス率の設定を検討する
それでは詳しく見ていきましょう。
設計数量と所要数量の違いを理解する
まずは「設計数量」と「所要数量」の違いを理解しておくことが重要です。
設計数量は設計図から拾い出した工事に必要な部材などの数です。
一方で所要数量は現場で必要な部材などの数になります。
実際に現場で工事をする際には、半端な材料が発生することや、損傷で使えない部材が出るという事を考えておかなければなりません。
そのため、ほとんどの場合で設計数量と所要数量は同数にならず、多くの場合は所要数量が多くなることを理解しておきましょう。
実行予算と差異が発生しやすい項目を確認する
工事後には実行予算に対する実績を振り返り、差異が発生しやすい項目を確認することが大切です。
差異が発生している項目こそが、想定していた利益を確保できない原因となります。
そのため、理由を明示できる数字で計算を行い、確度が高い実行予算を組むことが重要です。
特に、差異が発生しやすい発注金額と支払金額について慎重に確認しましょう。
発注金額は実行予算の内容や金額について各業者と交渉し、決定後に発注することで確定しています。
しかし、工事内容の変更や天候や工事進捗の都合で工期が延長した場合などに、実行予算との差異が発生する可能性があるでしょう。
支払金額は、当初工事の計画にはなかった別途工事や追加工事が発生した場合に材料や人員を追加することが必要となり、支払金額に差異が発生する可能性があるでしょう。
材料ロス率の設定を検討する
現場での材料ロスがどのくらい発生するのか予測しながら、所要数量を慎重に検討することが大切です。
そのため、予め材料ロス率を定めている企業もあります。
つまり、材料ロス率とは先程説明した設計数量よりどれ程多く見積もるかという比率です。
材料ロス率が低いほどコストを削減することができますが、現場の状況次第でロス率は異なりますので、安易に一律で定めることは難しいでしょう。
最適な材料ロス率を定めるためには自分たちの工事の実績を積み重ね、予算に反映させていく方法がおすすめです。
まとめ
この記事では実行予算について、見積もりや積算との違いや、どのように作成していくのか具体的に解説してきました。
エクセルかシステムのどちらを活用するか次第で、大きく作業効率が異なります。
限られた時間の中で実行予算を作ることが多い担当者の方は、精度の高い実行予算を作成するためにもシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
正確な実行予算を組んで適切なコスト管理を行い、業務効率を改善することで、会社の利益確保に貢献することが可能です。