建設業界においては、原価公開方式と複合単価方式という2つの方式が採用されています。
本記事では、この2つの方式の特徴とメリット、デメリットについて詳しく解説します。
原価公開方式と複合単価方式のどちらを採用するかは、建設業者のご自身のニーズに合わせて決定していただく必要がありますので、本記事を参考に適切な方法を選んでください。
この記事の内容
建設業における見積方式の種類
建設業における見積方式の種類は、以下の2つに分けられます。
- 複合単価方式
- 原価公開方式
複合単価方式
建設業における複合単価方式とは、工事を実施する際に、複数の工事項目を一括して評価する方式のこと。
具体的には、建築物の建設や道路の整備などの工事に必要となる材料や労働力、機器などの単価と作業量に基づいて価格を算出する方法を指します。
例えば、建設業者がある建物の建設を行う場合、コンクリートの打設、配管工事、電気工事、内装工事など、複数の工事項目が必要になるでしょう。
複合単価方式では、これらの工事項目を一括して評価し、単価と作業量に基づいて全体の価格を算出します。そのため、工事の見積もりが簡素化され、工期の短縮や予算管理の容易化が可能になります。
原価公開方式
建設業における原価公開方式とは、建設プロジェクトにおいて、請負契約により工事を行う際に、原価情報を明示的に開示する方式のこと。
建設プロジェクトを成功させるためには、コスト開示情報の収集が欠かせません。見積もりと実際のコストに関する正確で詳細な情報がなければ、プロジェクトの成功の可能性は大きく薄まるでしょう。
原価開示によって、プロジェクトに関わるすべての関係者が、必要なコストとリソースを明確に理解できるようになります。
その結果、予算超過やその他の費用のかかる問題のリスクを最小限に抑えることができます。
また、不適切な支出を防止することもできます。
どの資源がどのように使われたかを全員が把握できるようになることで、透明性のある説明責任を果たせます。よって、建設プロジェクトの成功に不可欠な財政責任が形成されるでしょう。
また原価公開方式では、請負業者が工事に必要な資材、労務費、機器費、諸経費などの原価情報を明示的に開示することで、オーナー側が正確な費用を把握できます。
複合単価方式のメリット・デメリット
では、複合単価方式にもメリット・デメリットがありますので、詳しく解説していきます。
メリット
メリットは下記の2つになります。
- 価格の比較が簡単
- 予期せぬトラブルもコストに入れることができる
複合単価方式は、さまざまな請負業者間の入札を簡単に比較することができます。この方法では、同一の作業単位を分離することで、価格の比較が容易になり、依頼の際の相見積もりが取りやすいでしょう。
そして、プロジェクトの過程で発生するトラブルもコストとして考慮することができるため、追加で予算がかかるということは少なくなります。
デメリット
一方デメリットは、以下の3点になります。
- 見積の際に大きな分析が必要
- 複雑な工事には不向き
- 単価が高くなる傾向がある
複合単価方式は、プロジェクトの総コストを見積もる際に、より複雑なプロセスとより大きな分析を必要とします。また、この方法は、請負業者が継続的にコストを追跡し評価する必要があるため、実施に時間とコストがかかる可能性もあるでしょう。
複合単価方式は異なる作業条件で行われる場合、単価を決めることが難しいため、複雑な工事をする際には不向きな決定方法です。
複合単価方式では、複数の工事項目を一括して評価するため、単価が高くなることがあります。特に、単価が高い工事項目がある場合、その影響が大きくなる恐れがあります。
原価公開方式のメリット・デメリット
一方、原価公開方式を採用するメリットとデメリットについてそれぞれみていきましょう。
メリット
原価公開方式のメリットは、以下の2つになります。
- プロジェクトの財務的な詳細がわかる
- 請負業者にも適正な賃金を払うことができる
プロジェクトの財務的な詳細がわかれば、プロセス全体を通してより多くの情報に基づいた意思決定を行うことができます。
透明性も高いため、依頼者側は、建設業者が実際に使用した材料や労働力、機器などの原価を把握することができ、適切な判断が可能になります。
また原価公開方式では、原価を公開して価格を算出するため、公正性が高くなる傾向があります。特に建設業においては、請負契約で、請負業者と建設主との間で価格の交渉が行われることが多いため、公正性が重要となります。
透明性が高まることから、適正な賃金の支払いが見込めるでしょう。
デメリット
次にデメリットを解説していきます。原価公開方式のデメリットは以下の2つです。
- 自社の情報を外部に公開することになる
- 価格交渉に柔軟性がない
原価公開方式は、原価を公開することが前提となるため、情報漏洩のリスクがあります。特に、競合他社へ情報漏洩が発生する可能性があるため、この方式でプロジェクトを受注することに抵抗がある業者もいるかもしれません。
また、原価公開方式の場合、すべての費用が最初から見積もりに含まれているため、契約価格の交渉に柔軟性がない場合もあります。
まとめ:目的に応じてそれぞれの方式で経費を出そう
原価公開方式と複合単価方式のどちらを採用するかは、請負業者自身のニーズに基づいて決定する必要があります。
原価公開方式は、建設業を始めたばかりのコントラクターや予算が限られている場合に一般的に使用される、よりシンプルなアプローチになります。
一方、複合単価法は、より複雑なプロセスとより大きな分析が必要ですが、プロジェクトの総コストを見積もる際に、より柔軟で正確な方法を提供します。
それぞれのメリットとデメリットを比較し、最適な方法を選択してください。