積算を行う際、設計図書は大変重要な役割を果たします。
積算とは、建築に関わる費用を事前に計上する大変重要な業務のこと。
また設計図書とは、建築物を建設する際に必要な情報が記載された書類のことです。
積算を行う際には、建設物の構造や仕様を詳しく知る必要があるので、設計図書を参考にしながら業務を行うことが重要となるのです。
本記事では、積算における設計図書の役割や種類について解説していきます。
設計図書とは
設計図書とは、簡単にいうと建設物を建築する際に必要な情報が記載された書類のこと。
具体的には、建設物や敷地内などの図面や仕様書や設計図のことをいいます。
設計図書とは「建築物の建築工事の実施のために必要な図面および仕様書」のことである、と建築法第二条六項にも記載されています。
設計図書の役割
設計図書の役割は、施工者に発注者の希望の仕様や図面を伝えること。
建築物を建設する際には、必ず設計図書が必要となります。
なぜなら、建設物を建設する際には発注者と受注者(施工者)がいます。
発注者の希望や意思を施工者に伝えることで初めて発注者の望む建設物を建設することが出来るからです。
発注者が納得できるように正確に設計図書を作成することは、正確な積算やクレームリスク減少に繋がるといえるでしょう。
設計図との違い
設計図書とよく似た言葉として、設計図という言葉もよく聞くと思います。
では、設計図と設計図書との違いとは一体何でしょう。
設計図とは、青焼き図や原図を含む、建築に必要な図面のこと。
設計図書とは、建築に必要な図面に仕様書を付け加えたもののこと。
仕様書とは、建設における各工程の工事内容や施工内容などを、具体的に規定・記載したもののことです。
設計図に、具体的な仕様を記載した仕様書を付け加えることで、発注者の意図を施工者により伝わりやすくできると言えるでしょう。
設計図書の保存期間
設計において重要な役割を持つ設計図書ですが、保存期間はどのくらいなのでしょう。
建築士法24の4規則21によると、保存期間は作成した日から15年間です。
長いと思われる方もいるかもしれません。
ただ、建設物は何年後か数十年後かに修理や改修を行う場合もあるので、15年と言わず事務所を営業している限りは保存し続けた方がよいでしょう。
設計図書の種類
次に設計図書の種類について、次の4種類について説明します。
- 意匠図
- 構造図
- 設備図
- 外構図
意匠図
意匠図とは、間取りやデザインなどを伝えることを目的とした図面のこと。
意匠図を上から見た配置図、平面図、屋根状図、横から見た立面図、断面図、展開図や、材料の数などを記載した仕上げ表などがあります。
構造図などと異なり、専門知識がない人でも建物のイメージがつきやすい図といえるでしょう。
構造図
構造図とは、意匠図を参考に構造計算を行って梁や柱などの構造部材を示した図面のことで、構造図を基に梁や柱がつくられます。
意匠図がデザインを伝える為の図なら、構造図は実際に建築物を構造する為に必要な図といえるでしょう。
構造図と計算書とを合わせて構造設計図書と呼ばれ、耐震などにおいて人命や財産を守ることを目的としています。
設備図
設備図とは、建物の設備等の配置を示した図面のことです。
具体的には電気や電話、ガスや水道の配管や、コンセントの配線などのことで、それぞれの取付位置や数などが示されています。
空調換気設備図、電気設備図など、それぞれの設備ごとの図面があります。
外構図
外構図とは、建物以外の外回りの部分、道路や隣家との境界部などのデザインや仕様を記載した図面のこと。
建設には、建物だけでなくガレージや駐輪場、アプローチやマンホール、外部コンセントなど、外構物とのバランスも重要となります。
また、外構物の勾配などで雨水処理などにも関わってきたり、建物とのバランスで見栄えにも大きく関わってくる為、重要な図面といえるでしょう。
基本製図の基準をおさらいしよう
ここでは、設計図書を取り扱う上で欠かせない、基本製図の基準についておさらいしましょう。
ここでご紹介するのは以下5点です。
- 原図の用紙サイズ
- 文字の種類
- 線の種類
- 尺度の種類
- 寸法の単位
原図の用紙サイズ
用紙サイズは、JISZ8311により定められている大きさはA1もしくはA3です。
用紙は横方向で使用し、輪郭線と表題欄を設けます。
表題欄に記載する内容は以下のものです。
- 工事・図面の名称
- 図面番号
- 設計者
- 担当部局
- 尺度
文字の種類
文字の種類についての決まりは、次の3点です。
項目 | 内容 |
---|---|
文字の種類 | 漢字、かな、アラビア数字及びローマ字とし、外来語はカタカナ表記 |
文字のフォント | ゴシック体とし、CADデータの交換標準に支障が出ないように特定CADソフトの固有フォントは避け、一般的なものを使用 |
文字の大きさ | タイトルの文字高さは、10.0mm文字幅8.0mm一般は、文字高さと文字幅共に3.0mm(寸法、引出文字共) |
線の種類と線の幅については以下を押さえておくとよいでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
線の種類 | ・実線・破線・点線・一点鎖線・二点鎖線 |
線の幅 | ・極細線(0.1mm)・細線(0.2mm)・太線(0.3mm)・極太線(0.5mm) |
また、ハッチングを施す線の間隔(中心距離)の決まりは次の2点です。
- 平行線の場合、線間隔を線の太さの3倍以上
- 密集する交差線の場合、線の間隔を線の太さの4倍以上
図面の解読が難しくなる為、塗りつぶし及びスマッシングは行わないよう定められています。
ただし、標準図の記号で塗りつぶしとなっているものは除きます。
尺度の種類
次に尺度の種類について。
作図に用いる縮尺は、図ごとに記載する必要があります。
縮尺は、以下の通りです。
図の種類 | 縮尺 |
---|---|
詳細図 | 1/20、1/30、1/50 |
一般図 | 1/100、1/200、1/300、1/500、1/600 |
寸法の単位
次に寸法の単位について。
単位はミリメートルで単位記号は省略しますが、ミリメートル以外の場合、その単位記号は記載する必要があります。
また、寸法は寸法線等に添えて横書きします。
まとめ
本記事では、積算において重要な役割を持つ設計図書の役割と種類について解説しました。
設計図書は、発注者の希望や意図を施工者に伝える為に大変大きな役割を持つ書類のこと。
積算業務では、建築に関わる費用を前もって計上するので、工程ごとの詳細な仕様が記載されている設計図書を参考に業務を進めていかなければなりません。
つまり、正確な設計図書を作成し、設計図書を参考に正確に積算業務を行うことが、費用削減や発注者の納得いく建設に繋がるといえるでしょう。
本記事を参考に、積算における設計図書の役割についての知識を深めてみてはいかがでしょうか。