工事でよく聞く一般管理費とはいったいどのような費用なのでしょうか。
建設業界で仕事をしていても、詳しくは理解できていないという方も多いでしょう。
この記事では一般管理費や2022年に改訂された一般管理費率について詳しく説明します。
積算に携わる方はぜひ参考になさってみてください。
この記事の内容
一般管理費は工事費の一部
一般管理費に工事原価を加えたものが工事費となります。
そのため、一般管理費は工事費の一部といえるでしょう。
まずは以下の内容について見ていきましょう。
- 一般管理費
- 工事費
- 現場管理費との違い
一般管理費とは
一般管理費とは会社を経営していく上で必要な費用です。
例えば社員の給与や会社の利益、福利厚生費、会社で使用する事務用品、減価償却費、事務所の家賃や水道光熱費などの経費が一般管理費です。
工事原価に一般管理費等率を掛けて計算します。
工事費の内訳
工事費の内訳は工事をするのに必要な費用である「工事原価」、先程説明した会社を経営していくために必要な「一般管理費」、あとは「消費税相当額」となります。
つまり、工事をするために最低限必要な費用に、会社を維持するために必要な利益や消費税相当額を上乗せした金額が、工事費です。
なお、共通仮設費については以下記事で詳しく解説しています。
積算において共通仮設費はどう計算する?内訳や計算方法を解説!現場管理費との違い
現場管理費は現場を管理するのに必要な費用です。
例えば、現場作業に携わる人の給与や工事中の建物に掛ける保険、近隣住民に対する防音対策や補償費用になります。
一方で、一般管理費は先程説明したように、会社そのものを維持管理するために必要な費用といえます。
どちらも工事で利益を確保するためには重要な管理費です。
現場管理費については以下記事で詳しく解説しています。
一般管理費の内訳
それでは一般管理費の内訳について説明します。
- 人件費関連
- 物件にかかる費用関連
- 税金関連
- その他雑費
人件費関連
まずは大きな割合を占める人件費関連です。
より細かく分類すると以下5つになります。
- 役員報酬
- 従業員給料手当
- 退職金
- 法定福利費
- 複利構成費
それぞれ詳しく説明します。
役員報酬
役員報酬とは取締役や監査役などの会社の役員に対して、職務への対価として定期的に支払われる費用です。
また利益が出たことに対して特別な報酬という考え方であるため、利益が出たら、税金を納めて、それでも利益があれば役員報酬として支払われるものになります。
従業員給料手当
従業員給与手当は従業員に対して労働の対価として支払う費用です。
またボーナスも一般管理費に含まれます。
退職金
退職金は過去の勤務の対価として、退職時に支払われるものです。
給料などと同じで、退職金も一般管理費になります。
法定福利費
法定福利費とは従業員の社会保険料の会社負担分の費用となります。
主な社会保険の種類は、健康保険料、厚生年金保険、労災保険、雇用保険、介護保険などが
あり、従業員の給料の約15%程度が会社の負担額です。
法律により従業員の法定福利費を支払うことを義務付けられているため、必ず支払う必要があります。
福利厚生費
福利厚生費とは福利厚生を目的とする任意の費用のことです。
例えば従業員の社員旅行費や健康診断を受診するための費用、慶弔見舞費用、また忘新年会の費用も福利厚生費となります。
福利厚生費として計上する際には、「全従業員が対象」である「常識的な金額である事」、「現物持ち込みではない」、という条件を満たすことが重要です。
物件にかかる費用関連
次に物件にかかる費用関連について説明します。
以下4つの項目を見ていきましょう。
- 地代家賃
- 減価償却費
- 開発償却費
- 維持修繕費
地代家賃
地代家賃とは事業で使用する土地や事務所の賃借に対して貸主に支払われるものです。
地代家賃も一般管理費に区分されます。
減価償却費
減価償却費は固定資産を購入した費用を耐用年数に合わせて分割し、その年ごとに費用として計上するものです。
一般管理費として区分することが可能です。
例えば本社ビルや設備投資などにおいて減価償却を行います。
開発償却費
開発費とは新技術や資源の開発のために支出した費用のことで、資産として計上し、毎期償却していくことができます。
無形資産の償却費は一般管理費に計上することが可能です。
維持修繕費
維持修繕費とは会社経営に必要とされる建物の修繕に必要な費用に加え、設備の交換や維持費なども含まれます。
自然災害時に建物が損壊した場合に、状況を回復するような場合も修繕費とみなされ、一般管理費として計上することが可能です。
税金関連
次に税金関連について説明します。
租税公課
租税公課とは、必要な経費として認められている税金や公的負担金の事です。
具体的には印紙税、登録免許税、固定資産税、都市計画税、などの税金や公共サービスの手数料が対象となり、一般管理費に計上されます。
その他雑費
次にその他雑費について見ていきましょう。
雑費
雑費は他のどの科目にも振り分けられない、勘定科目です。
費用も他の項目に比べて小さいため、雑費として計上されます。
例えば銀行の手数料、組合の年会費やクリーニング代や各種手数料が雑費とされ、一般管理
費に計上されます。
一般管理費率についても押さえておこう
一般管理費は一般管理費率を使用して計算することが可能です。
そのため、一般管理費率のポイントを押さえておくことが重要です。
一般管理費率とは
一般管理費率は工事原価に対する比率を割合で計算します。
直接工事費は一つずつの項目を計算し、加算して積算することに対し、一般管理費は工事原価に対する割合で求めます。
国土交通省で率が定められている
また一般管理費率は国土交通省で率が定められています。
なぜなら、コンペや入札の際には、どの企業も工事費用を抑えようと考えますが、直接工事費はなかなか削ることができないため、一般管理費を削ることを考えます。
しかし、一般管理費を削ってしまうと、企業の利益を圧迫し、その結果として従業員の給与にも影響が出てしまうことが背景にあるため、最低限の利益が確保できるよう、国土交通省により率が定められているのです。
2022年4月に改訂
諸経費動向調査では「共通仮設費」「現場管理費」に関する内訳について調査を行っています。
調査結果で明らかになった本社経費の増加の影響を受けて、国土交通省は土木工事に適用する一般管理費等率を2022年4月に改訂しました。
詳細は下表の通りです。
工事原価 | 一般管理費等率(改定前) | 一般管理費等率(改定後) |
---|---|---|
500万円以下 | 22.72% | 23.57% |
500万円を超え30億円以下 | -5.48972×LOG(Cp)+59.4977 | -4.97802×LOG(Cp)+56.92101 |
30億円を超える | 7.47% | 9.74% |
(参考:国土交通省)
改定によって、一般管理費等率の上限と下限がそれぞれ引き上げられたことは、建設業者にしっかりと利益を確保させることを目的としています。
建設業者が利益を出すことで、社員の給料が高まり、人材の確保がしやすくなるでしょう。
まとめ
この記事では工事における一般管理費や一般管理費率について説明しました。
一般管理費とは社員の給与や会社の利益、福利厚生費、会社で使用する事務用品、減価償却費、事務所の家賃会社など、会社を経営していく上で必要な費用です。
また一般管理費は工事原価に決められた一般管理費率を掛けることで求めることができます。
この率を2022年に国土交通省が引き上げたことについても詳しく解説していますので、積算に携わる方はぜひ理解しておくことをおすすめします。