建築積算士とは

建築積算士とは

建築積算士とは

建築物の建設にあたり、設計図や仕様書から必要な材料や数量を算出し、建築にかかる費用の見積もりを出す仕事を「積算」と言います。巨額が関わる建築業界において欠かせない業務です。
建築積算士は、その業務について知識や技術を有している証明となる資格です。
建築積算士には以下12の内容について専門知識が求められます。

  • 1.生産プロセス工
  • 2.事発注スキーム
  • 3.設計図書構成
  • 4.工事費構成
  • 5.積算業務内容
  • 6.数量積算基準
  • 7.標準内訳書式
  • 8.主要な市場価格
  • 9.データ分析と積算チェック
  • 10.施工技術概要
  • 11.LCC・VE概要
  • 12.環境配慮概要

建築積算士の魅力

積算業務の魅力は、設計図書を立体的に分析して、建築可能な状態へと導くこと。ときに設計図を作成した事務所に代替案を提案するなどし、実現へと具体化していくこともあり、プロジェクトの根幹に関わることができると言えます。

建築積算士のメリット

建築積算士の資格にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

現場において

公共建築などで、施工管理士や建築士と並んで建築積算士の資格提示を求められる場合があります。また、競争参加審査の対象として建築積算士の資格が必要になることがあります。

キャリアアップにおいて

積算事務所では重要視しているところもあり、資格手当がつくケースがあります。
また積算事務所への転職時も、積算業務ができる証明になることから有利に働くと言えそうです。

建築積算士になるためには

積算業務ができる証明となる「建築積算士」の資格は、公益社団法人・日本建築積算協会が主催する民間試験に合格することで取得することができます。詳しく説明します。

試験概要

試験は一次試験と二次試験があり、一次では基本知識に関する問題が学科試験で、二次では実務知識に関する問題が実技試験で行われます。試験内容は公益社団法人・日本建築積算協会が発行しているガイドブックに沿って出題されます。以下概要です。

一次試験 二次試験
受験資格 受験年度の4月2日時点で、満17歳以上であること ・同年度の一次試験に合格していること
・一次試験免除対象者*1であること
試験日 10月頃 翌年1月頃
試験会場 札幌/仙台/東京/名古屋/大阪/岡山/広島/福岡/鹿児島/沖縄 札幌/仙台/東京/名古屋/金沢/大阪/岡山/広島/福岡/鹿児島/沖縄
受験料 27,500円(学生会員は13,750円)(消費税込) 27,500円(同年度一次試験合格者は不要)(建築積算士補、学生会員は13,750円)(消費税込)

*1…一次試験免除対象者
1.日本建築積算協会が認定する建築コスト管理士、建築積算士補
2.建築士法による一級建築士、二級建築士および木造建築士
3.建設業法による一級および二級建築施工管理技士
4.日本建築積算協会が実施する積算学校卒業生
5.過去の一次試験合格者

一次試験 二次試験
試験方法 試験時間:3時間
問題数:50問
問題形式:4肢択一
1 短文記述試験
試験時間:1時間
問題数:2問
問題形式:問題に対する回答を短文(200文字以内)で記述

2 実技試験
試験時間:4時間30分
問題数:躯体(コンクリート、型枠、鉄筋)、鉄骨、仕上、内訳明細作成・工事費算出(以上4分野)
問題形式:図面に基づき、数量を計測・計算する。内訳明細を作成する

出題範囲 「建築積算士ガイドブック」全章 1 「建築積算士ガイドブック」の第1~4章、第9~15章
2 「建築積算士ガイドブック」の第5~8章、巻末の基準類


二次試験合格後、資格登録の手続きが必要となります。登録料は13,200円(消費税込)です。その他注意事項等は日本建築積算協会のHPを確認してください。
https://www.bsij.or.jp/index.html

試験の難易度

ここ数年の合格率は6割程度。特に注意すべきポイントは、計算ミスと時間配分です。

すべて手計算となるため、解き初めの計算や寸法の読み方を間違えると、そのあとの全ての計算も間違えることになり、取り戻すのが大変になるので注意が必要です。

特に構造関連の問題は、算出する数字が細かくなる上に量もあり、特に気を付けるべきポイントと言えそうです。

計算は小数点第二位まで出す必要があったり、実務以上に数字を細かく問われる問題があるなど、普段の業務で慣れている人も試験対策はしっかりすべきと言えます。

また試験時間が足りず、苦戦を強いられる受験者も少なくありません。元々時間がかかる計算問題も多い上、出題数がとても多く、最後まで解ききれずに終わってしまうケースも少なくないそう。

細かく量も多い、建築積算士の試験。しかし、数字間違えは実務でも命取りになるため、積算業界で働くうえで大いに必要となるスキルと言えそうです。

試験対策

教本での勉強と過去問題を解くことが試験対策には欠かせません。

試験対策に欠かせない教本が日本建築積算協会が発行する『建築積算士ガイドブック』。試験の出題がこの本からとなっているため、必ず活用すべきと言えます。この本は問題の難易度が書かれているため、効率よく勉強を進めるのにも役に立ちます。

また積算の勉強を始めたばかりの人や、積算などの基礎を固めたい人には『建築積算 PCMシリーズⅢ』などの入門書を活用するのもおすすめです。こちらも日本建築積算協会が発行しています。

過去問題は数をこなすことで試験に役立ちます。日本建築積算協会のHPにも約10年分の過去問題が解説と共に掲載されていますので参考にしてみてはいかがでしょうか。

建築業界に欠かせない、積算業務ができる証明となる「建築積算士」。実務で必要となるスキルを養う意味でも資格を取得してみてはいかがでしょうか。



参照:
公益社団法人・日本建築積算協会
https://www.bsij.or.jp/index.html
「建築積算士認定事業による2020年度建築積算士二次試験実施結果
https://www.bsij.or.jp/pdf/2020_sekisan_goukaku_2.pdf