建設業においては、売上を重視する傾向があるため「利益率が低い」と言われています。
売上が増えていても思ったほど利益が出ないのは、利益率を意識していないからかもしれません。
では、建設業界における利益率はどれくらいなのでしょうか。
そこで、この記事では建設業界の利益率はどれくらいなのか、利益率の種類や目安をご紹介します。
建設業で利益率を高めたいと考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
この記事の内容
建設業の企業における利益率とは?
まず、一般的な利益は売上総利益となる「粗利益」のことを指していますが、「利益率」で考えた場合は以下の計算式で割り出します。
- 粗利益÷売上高×100%=利益率
建設業において経営向上を目指す場合は「利益率」が重要ですが、売上が増えたからと言って必ずしも利益率が上がるとは限りません。
売上はさほど変わらなくても、利益率が上がれば利益は大きくなるでしょう。
また、利益率にも種類があるので、建設業で活用される利益率について理解することが大切です。
建設業で活用される主な利益率は5種類
それでは、建設業で活用されている5種類の利益率についてそれぞれに詳しく解説します。
- 売上高総利益率(粗利益率)
- 売上高営業利益率
- 売上高経常利益率
- 自己資本経常利益率(ROE)
- 総資本経常利益率(ROA)
売上高総利益率(粗利益率)
売上高総利益率(粗利益率)は、「売上総利益÷売上高×100」で算出します。
「粗利益」は、建設業では「工事価格」に該当する「売上高」から、材料費や労務費などの経費に当たる「工事原価」を引いたものです。
- 売上総利益÷売上高×100
- 粗利益=工事価格(売上高)-工事原価(売上原価)
例えば、売上高20億円で売上総利益8億円の場合で計算してみましょう。
「売上総利益÷売上高×100」となるのでこのケースでの売上高総利益率は40%となります。
売上高総利益率(粗利益率)は高いほど良いと言えますが、企業規模が大きくなるにつれて数値が小さくなる傾向が見られます。
売上高営業利益率
売上高営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合のことです。売上高から売上原価や販売費、管理費を引いて割り出します。
- 売上高営業利益率=営業利益÷売上高
例えば、営業利益16億円で売上高5億円の場合で計算してみましょう。
売上高営業利益率=営業利益÷売上高となるので、3.2%となります。
売上高営業利益率が高いほど、経営管理効率が良く収益性も高いことを表します。
売上高経常利益率
売上高経常利益率は、売上高に対する経常利益の割合を表す指標です。
- 経常利益率=経常利益÷売上高
例えば、経常利益が1億円で売上高が2,000万円で計算してみましょう。
経常利益率=経常利益÷売上高で計算すると5%です。
「経常利益」は、営業利益の他に財務活動での損益なども加味して算出します。
売上高経常利益率が高いほど、企業収益力が高いことを表します。
自己資本経常利益率(ROE)
自己資本経常利益率(ROE)は、自己資本に対する純利益の割合を表す指標です。
英語では「Return On Equity」と表され、Equityには「株主資本」という意味があります。
別名「株主資本利益率」と言われるように、主に株主や投資家が投資した資本に対してどのくらいの効率で利益を得られるかを見極めるときの目安です。
- 自己資本経常利益率(ROE)=純利益÷自己資本×100
ちなみに、2020年建設業における自己資本経常利益率(ROE)平均値は14.3%です。
その企業に投資する投資家が多いほど、利益率が高い企業であると印象付けられます。
総資本経常利益率(ROA)
総資本経常利益率(ROA)は、総資本に対してどれだけ効率よく純利益をあげているかの割合を表す指標です。英語では「Return On Assets」となり、Assetsは「資産」という意味があります。
企業に投資された資産をもとに、どれだけ効率よく収益をあげているのか知りたいときの目安となります。
- 総資本経常利益率(ROA)=純利益÷総資本×100
2020年建設業における、総資本経常利益率(ROA)平均値は6.1%です。
総資本経常利益率(ROA)の数値が高いほど、効率良く資産運用している企業と判断できます。
建設業界の利益率目安は20%前後
一般財団法人建設業情報管理センターの調査では、建設業界の利益率は約14%〜34%と幅があるものの、平均で20%前後であることがわかります。
建設業における営業利益率ランキングでも、20%を越えている企業はほとんどなく、約12%〜16%です。
今後利益率を意識しながら経営向上を目指したいのであれば、20%を目標に掲げてみてはいかがでしょうか。
参照:建設業の経営分析(令和2年度)
参照:建設業の経営分析(令和元年度)
建設業界における利益率の推移
平成28年に国土交通省がまとめた「建設業を取り巻く主な情勢」によると、企業規模を問わず営業利益は改善傾向が見られます。
ただし、企業規模で見た場合は、小規模企業ほど総利益率が高い一方で、営業利益率は低くなる傾向が見られるのも事実です。
小規模企業は大企業に比べると、販売費及び一般管理費の割合が高いのが原因と考えられます。
企業規模による違いはあるものの、建設業界全体では少しずつ利益率が上がっていると見ていいでしょう。
参照:建設業を取り巻く主な情勢
まとめ
この記事では、建設業界の利益率はどれくらいなのかや、種類や目安を紹介しました。
建設業界は、他業種に比べて利益率が低いと言われていますが、売上だけでなく利益率についても意識して改善していくことはできます。
建設業を営む経営者の方で、利益率を上げ経営向上を目指したい方はぜひ参考にしてください。