VE提案という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
VE提案は、アメリカ発祥の手法で、最近では日本でも取り入れられるようになってきている手法です。
VE提案を取り入れることで、機能性や品質を維持しながらコストダウンを目指すことができます。
本記事では、VE提案とは何なのか、メリットや注意点、事例など解説していきます。
この記事の内容
VE提案とは
VE提案とはどのようなものなのでしょうか。
簡単にいうと、機能・サービス・コスト面から、総合的に価値を高める提案を受注側から行うことです。
VEとは、Value Engineering(バリューエンジニアリング)の頭文字を取ったもので、価値工学のこと。
製品やサービスなどの商品の機能・コスト・品質面などの価値を総合的に高めていこうとする考え方です。
従来は受注者が持つプランを発注者にそのまま売るスタイルが主流でした。
一方、VE提案では受注者が機能・コスト・品質を意識した工夫や提案を発注者におこなうスタイルであり、建設業界では主流の考え方となっています。
また、建設業界以外でも用いられている手法でもあります。
アメリカ発祥の手法
VEは1947年に開発、1954年にアメリカで取り入れられた方法。
開発したのはローレンス・D・マイルズ氏(ゼネラル・エレクトリック社)です。
当時、必要な材料であったアスベストが入手できず、なんとか代替品で乗り切ったのが始まりとされています。
VE提案とVA提案の違い
本記事をご覧になっている方の中には、VA提案という言葉を聞いたことがある方もいらっしゃるでしょう。
VE提案とVA提案はどのように違うのでしょうか。
VEは価値分析、VAは価値工学のことです。
大きな違いは既存の製品サービスの改善か新製品を開発するかという点です。
VE提案は既存の製品やサービスに対して改善を行いコストダウンを目指します。
一方、VA提案は機能とコスト面を総合的に高められるような製品やサービスを新しく開発するのです。
項目 | 内容 |
---|---|
VE提案 | いかに原料を安く調達するかや作業効率を向上するかを考える |
VA提案 | 既にあるサービスや商品を参考に、同じコストで機能向上するか同じ機能でコストを下げるかを検討する |
VE提案の3つのメリット
ここでは、VE提案のメリット3点を紹介します。
- 品質の最適化
- コスト削減
- トラブル防止
以下、詳しく説明します。
品質の最適化
メリット1つ目として挙げられるのが品質の最適化です。
VE提案の大きな特徴として、品質とコストの両面から商品やサービスの価値を高めるという点が挙げられます。
特に建築業界では、他の業界と異なり多くの利害関係者が存在します。
その点、VE提案はコストと品質両面の確保を目指す為、多方面においての品質の最適化が可能となる方法といえるでしょう。
コスト削減
次のメリットはコスト削減です。
先述しましたが、VE提案は品質とコストなどの点から総合的に商品やサービスの価値を高めていく考え方です。
VE提案は受注側が発注者に提案するものなので、作業工程などの効率化を図ることなどでコスト削減を実現することが可能な方法といえるでしょう。
トラブル防止
3つ目のメリットは、トラブル防止です。
VE提案は、品質とコストの両面からサービスや製品を見直していくので、その過程で効率化を図れたり、今後起こりうる問題点などにも言及することができます。
その為、VE提案によりトラブルを防止できるといえるでしょう。
VE提案で注意しておきたいポイント
ここでは、VE提案で注意するポイント2点を紹介します。
- 初期段階で導入すること
- 現場の声を反映すること
以下、詳しく説明します。
初期段階で導入すること
建設VEでは初期段階でなくとも提案することが可能ですが、国土交通省では、以下3つの段階で提案することが推奨されています。
- 設計段階
- 工事入札段階
- 施工段階
上記のうち、どの段階で導入すべきかは一概にはいえませんが、基本的には初期段階で導入するのがおすすめです。
初期段階でVE提案を取り入れることで、発注者や顧客に対して信頼を得ることができたり、明確な提案が可能となります。
また、事前に明確な提案を用意できると同時に、起こりうる問題や不足する機能などの予測もしやすくなるといえるでしょう。
現場の声を反映すること
VE提案では現場の声を反映することにも注意しましょう。
VE提案は、管理者だけが考えるのではなく、現場の声を取り入れることが重要です。
実際に働いている人からの意見を取り入れることで、働く人も働きやすく、コストダウンを目指すことのできる提案が可能となるでしょう。
VE提案、6つのステップ
VE提案は以下のようなステップで進めます。
- 情報の収集
- 定義付けと整理
- 情報の分析
- 提案
- アフターフォロー
- 最終評価
それぞれ見ていきましょう。
①情報の収集
VE提案の提案書を作成する前に、求められる品質がどの程度かを知る必要があります。
まずはその情報を集めなければなりません。
②定義付けと整理
情報を収集したら、対象の商品や構造物の機能を定義。
定義した機能を先に収集した情報と結びつけて整理します。
③情報の分析
情報の収集が完了したら、整理し、コスト面や最低限必要な機能を洗い出すといった分析を行ないます。
また、分析したら改善の必要性が高い機能を洗い出し、優先度を決定しなければなりません。
④提案
そうした情報の整理・分析が済んだら、分析結果を提案書にまとめてクライアントに提案。
公共工事や入札制の工事の場合は書式が決まっていることも多いため、書き方に従って作成するようにしましょう。
⑤アフターフォロー
クライアントが提案書の納得に納得したら、作業を開始します。
作業を開始した後も、継続して検証しなければなりません。
⑥最終評価
作業終了後に、VE報告書を書き、最終評価を行いましょう。
評価の内容は課題として持ち帰り、次の提案に活かす必要があります。
VE提案の事例
次に、VE提案の2つの事例を紹介します。
- 入札額を最適化した事例
- 工期を短縮した事例
以下、詳しく説明します。
入札額を最適化した事例
建設業者のA社は、近年、入札における受注率が低下していることに悩んでいました。
通常、公共工事などの入札の際、見積金額が高いと受注が難しくなります。
そこで、入札の受注率アップのセミナーを受けたところ、VE提案の存在を知り、早速設計の段階から取り入れることに。
結果、材料や工程などの変更でコストダウンができ、受注率アップにつなげることができました。
工期を短縮した事例
同じく建設業者のB社は、建築資材の単価がアップしていることもあり、工期を短縮することで経費削減に取り組むことを考えていました。
そうした中、VE提案を取り入れると工期の短縮につながることを知ります。
VE提案では、現場の作業員の声を取り入れることで、作業工程の効率化を図り、工期を短縮できる可能性があります。
実際に、B社はVE提案を取り入れることで、現場の声を取り入れて最適な方法を取り入れることができ、工期短縮とコストダウンに繋げることができました。
まとめ
本記事では、VE提案とはどのようなものか、活用するメリットや注意点、事例などをご紹介しました。
VE提案を建築業に取り入れることで、品質とコスト両面の点からサービス向上を目指すことができるといえるでしょう。
本記事を参考に、VE提案を取り入れることを検討してみてはいかがでしょうか。