建業法とは?積算士として押さえておくべきルールや罰則などわかりやすく解説

建業法とは?積算士として押さえておくべきルールや罰則などわかりやすく解説

積算士は建築の際にかかる費用を見積もる積算を行う重要な役割を担います。

建業法は建設工事を行う際に守るべき法律のこと。

積算を行う際には、建設に直接関わる知識だけでなく、建設に関わる法律や決まりなどの知識も必要となります。

本記事では、積算を行う積算士が押さえておくべき建業法のルールや、罰則などをわかりやすく解説していきます。

建業法とは?

建業法とは?

まず、建業法とは一体どんな法律なのでしょう。

建業法は建設業法のこと

建業法とは、建設業法のことです。

建設業法は、簡単にいうと建築工事を行う上で守らなければならない法律です。

よって、建築における積算を行う際にも建設業法の知識は大変重要となるのです。

建設業法の目的

建設業法の目的は次の4つです。

  • 建設工事の適正な施工の確保
  • 発注者を保護する
  • 建設業の健全な発達の促進
  • 公共の福祉の増進に寄与する

建設業を営む者の資質の向上と建設工事の請負契約の適正化をすることで、上記4点を目的とする法律といえるでしょう。

建設業法が制定された背景と改正の歴史

建設業法が制定された背景と改正の歴史

ここでは、建設業法が制定された背景と改正の歴史について見ていきたいと思います。

建設業法が制定されたのは1949年。

制定された背景として、以下4点が挙げられます

  • 建設業法が制定されるまで、建設業者を取り締まる規制は府県令のみだった
  • 1945年終戦後の復興に伴う建設工事や業者が増加した
  • 工事増加に伴う不正(代金未払いや不当な前払い金、不正工事など)が増加した
  • 不祥事増加に伴う建築業界の信用が低下した

その後、景気回復やその後のバブル崩壊など時代背景に合わせて何度も改正が行われてきました。

大きな改正として、以下3点などが挙げられます。

  • 1971年登録制から許可制へ変更、下請人保護規制を追加
  • 2000年適切な入札の規定を追加
  • 2020年工期適正化規定を追加

このように、戦後の復興工事増加に伴い制定され、時代の変化に合わせた改正が行われています。

適切な建設工事が行われるように定められてきた法律といえるでしょう。

建設業法ガイドラインを確認しよう

建設業法ガイドラインを確認しよう

建設業法ガイドラインとは、どのような行為が建設業法に違反するのかを具体的にわかりやすく示した、国土交通省が策定したガイドラインです。

ガイドラインとして挙げられるものは以下の通り。

  • 建設業法令遵守ガイドライン
  • 発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン
  • 建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン
  • 中小建設企業のための内部統制向上ガイドライン

それぞれ見ていきましょう。

建設業法令遵守ガイドライン

元請負人と下請負人の関係において、法令違反となる行為を具体的に示し、関係性を公正かつ透明なものにすることを目的としています。

2022年現在、第8版が出されており、これまでも時代に合わせてさまざまな改正がなされてきたものです。

(参考:建設業法令遵守ガイドライン)

発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン

発注者と受注者の関係において、請負契約締結の際の法令違反行為を防ぎ、両者の対等な関係性の構築や、透明な取引の実現を目的としているものです。

2022年現在は第4版まで出されています。

発注者と受注者の関係性を良好なまま進めることは、最終消費者の利益にもつながります。

(参考:発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン)

建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン

適正な工期の設定や見積りにあたり発注者及び受注者が考慮すべき事項の集合体であり、建設工事において適正な工期を確保するための基準です。

働き方改革関連法に基づき適用が開始されたもので、時間外労働の上限規制に関する内容などが書かれています。

(参考:建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン)

中小建設企業のための内部統制向上ガイドライン

中小の建設企業が、企業内の内部統制を向上させるために定められたガイドラインです。

これまでのガイドラインが大企業の工事を基準に作られていることが多いのに対し、本ガイドラインは中小の建設企業向けに書かれていることが大きな特徴だといえるでしょう。

具体的には内部統制のフレームワークである「COSO」フレームワークについてなど書かれています。

このように、わかりやすく様々なガイドラインが策定されており、国土交通省のホームページから簡単に参照することができます。

改定されるとガイドラインも都度変更されるので、積算をする際にはこの建設業法ガイドラインを必ず参考にするとよいでしょう。

建設業法には、建設に関わる様々な法律について記載されていますが、どうしても法律だけを見ていてもわかりにくいもの。

そんな時に、ガイドラインを都度確認していくことで、違反行為に繋がる行為をしないようにできることは大きなメリットといえるでしょう。

(参考:中小建設企業のための内部統制向上ガイドライン)

建設業法で押さえておくべき3つのルール

建設業法で押さえておくべき3つのルール

次に、建設業法で押さえておくべきルールについて説明します。

積算士が建設業法で押さえておくべきルールについてはさまざまありますが、中でも重要な次の3つのルールを押さえておきましょう。

  • 第3条:建設業の許可について
  • 第19条:請負契約の内容について
  • 第20条:見積り等について

以下、詳しく解説します。

第3条:建設業の許可について

第3条では、建設業の許可について定められています。

1.建設業を営む者は、軽微な建設工事だけを行う場合を除いて、建設業の許可を受けなければならない。

軽微な建設工事とは次の工事のこと。

  •  工事1件の請負代金の額が建築一式工事にあつては1500万円に満たない工事
  • 延べ面積が150平方メートルに満たない木造住宅工事
  • 建築一式工事以外の、500万円に満たない建設工事

注意点として以下が挙げられます。

  • 2つ以上の契約に分ける場合は、それぞれの契約の請負代金の額の合計額とする。
  • 注文者が材料を提供する場合は、その代金も請負代金に含める必要がある。
  • 単価契約の場合には、工事1件全体の額
  • 消費税などを含んだ金額
  • 建設請負契約を行わない工事も対象外(自分の為の工事など)
  • 5年ごとの更新が必要

2.本店や支店などの営業所を設ける場合には都道府県の許可が必要

複数の都道府県にわたって設ける場合は、国土交通大臣の許可が必要です。

3.建設業法の対象29種の業種ごとの許可申請が必要で、新たに業種が増えた場合は都度申請できる

(参考:e-gov 第3条:建設業の許可)

第19条:請負契約の内容について

第19条では、以下の請負契約の内容について定められています。

  • 建設工事の当事者は、対等な立場での合意に基づき公正な契約書にて契約締結しなければならない。
  • 契約の際は署名又は記名捺印を相互に行う必要がある。
  • 契約書には、工事内容や工事完成時期、請負金額など、合計14項目について記載する必要がある。

(参考:e-gov 第19条:請負契約の内容)

第20条:見積り等について

第20条では見積り等について以下のように定めています。

  • 建設業者は、建設工事の請負契約をする際に、工事に応じて工程ごとの費用や労務費などの内訳を明らかにして見積を作成しなければならない。
  • 発注者は発注を依頼する時、見積を作成するための一定の期間を設ける必要がある。
  • 見積書は契約締結までに作成・交付する必要がある。

このように建設業法第20条には、見積の重要性や見積書の作成についての決まりが記載されており、見積士にとっては特に重要な条項といえるでしょう。

(参考:e-gov 第20条:建設工事の見積り等)

建設業法に違反したときの罰則

建設業法に違反したときの罰則

ガイドラインについて先述しましたが、建設業法は建設業に携わる者が守らなければならない法律です。

建設業法では、違反してしまった際の罰則についても定められています。

罰則には重いものでは懲役刑もあり、法律を知らなったでは済まされません。

法律を犯してしまうことのないよう、事前にしっかり理解しておくことが大切です。

以下、建設業法に違反した時の罰則3点について説明します。

  • 懲役刑が科せられる法律
  • 罰金刑が課せられる法律
  • 過料が課せられる法律

懲役刑が科される法律

懲役刑が科せられる罰則については建設業法47条と50条で定められています。

1.以下の行為により、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金(建設業法47条)

  • 建設業許可を受けないで建設業を営んだ者(工事金額:500万円以上)
  • 元請業者として工事を請負した場合、特定建設業許可が必要な金額(総額:4,000万円、建築一式工事:6,000万円)以上の工事を特定建設業の許可を受けないで下請契約を締結した者
  • 営業停止処分に違反して建設業を営んだ者
  • 営業禁止処分に違反して建設業を営んだ者
  • 虚偽又は不正の事実に基づいて建設業許可を受けた者

2.以下の行為により、6か月以下の懲役又は100万円以下の罰金(建設業法50条)

  • 許可申請書、変更届、経営状況分析申請、経営規模等評価申請などの書類に、虚偽の記載をして提出した者。

罰金刑が科される法律

罰金刑が科せられる罰則については建設業法52条に定められており、以下の行為により100万円以下の罰金が課されます。

  • 建設工事現場に主任技術者又は監理技術者を置かなかった者
  • 許可行政庁からの報告や資料提出の要請に応じない者、又は虚偽の報告をした者
  • 許可行政庁などの検査の拒否や妨害を行った者

過料が科される法律

過料が科せられる罰則については建設業法55条に定められており、以下の行為により10万円以下の過料に処されます。

  • 廃業届の届け出を怠った者
  • 営業所や工事現場ごとに掲げる標識などの掲示義務に違反した者
  • 営業所に帳簿を備えず、帳簿に記載せず、もしくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿や図書を保存しなかった者

まとめ

まとめ

本記事では、積算士として働く際に、押さえておくべき建設業法の基本についてお伝えしました。

積算とは、建設にかかる費用を正確に算出する大変重要な業務。

積算をする際には、建設や工事に直接関わる知識のみだけではなく、建設業法で定められている内容も大変重要となります。

本記事を参考に、建設業法の知識を深めていきましょう。