建設費(工事費)とは、建設工事を行うために必要な費用の総称です。
工事を行う場合、大きさ、形状、グレード(品質)、および利益率などの要素を考慮して、費用を決めなければなりません。
そこで本記事では、工事費を決める4つの要素と、それらを構成する直接工事費と間接工事費の違いについて詳しく解説します。
この記事の内容
建設費(工事費)とは
建設費とは、建設プロジェクトに必要なすべての費用の総称です。
建設費は大きく分けると、「直接建設費」・「間接建設費」の2つに分類することができます。この2つの費用について、下記で詳しく説明していきましょう。
直接建設費
直接建設費とは、建物や施設の建設に直接必要な費用のことを指します。
具体的には、建設資材、建設労働者の賃金や手当、設備機器などの費用が含まれます。直接建設費は、建設現場で直接使用されるものであり、工程管理や工事報告書に明確に示されます。
このタイプの費用は「直接工事費」とも呼ばれ、通常、建設プロジェクトに関連する最大の全体費用となります。
間接建設費
間接建設費とは、建物や施設の建設にかかる費用であり、直接的には建設現場で使用されないもののことを指します。
具体的には、設計・監理の費用、建設現場の管理費、保険料、税金、手数料などが含まれます。
これらの費用は、建設プロジェクトを円滑に進めるために必要なものですが、プロジェクトの完成に直接貢献するわけではありません。
二つの違いを知ることの重要性
建設プロジェクトを計画する際には、直接工事費と間接工事費の違いを理解することが重要です。どのようなコストを想定すべきかを知ることで、プロジェクトの効率と予算編成を向上させることができます。
また、プロジェクトリーダーは、潜在的な遅延や問題が発生する可能性がある場合に備えて、より良い準備にもつながります。
建設費の金額を決定する4つの要素
次に、建設費を決めるうえでの要素について解説していきます。
特に重要な要素は以下の4つです。
- 大きさ
- 形状
- グレード(品質)
- 利益率
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
大きさ
建物の大きさは建設費を大きく左右します。
建物の大きさは、階数や建物の総面積、部屋数、建物全体の容積などで構成されます。
建物に必要な材料が多く、建設労働者の数が多ければ多いほど、出費が増えるでしょう。
例えば、2階建ての建物は、平屋建ての建物に比べて時間や材料がかかる分、建設費が高くなります。特に大きな家では、必要な材料の量も多く、完成までの期間も長くなるため、より高いコストがかかるでしょう。
また、単純な大きさだけでなく、空間の広がりも影響します。
形状
建設コストを決定するもう一つの要因は、建物の形状です。
独特な形状を持つ高度にカスタマイズされた建物は、シンプルで均一な形状のものよりも建設コストが高くなります。
例えば、急カーブが多く、屋根の高さが異なる住宅は、同じ住宅でもペディメント屋根のものよりも建設費が高くなります。
アーチやドーマー、その他の装飾的な特徴も、建物のコスト増加の一因です。
出窓、バルコニー、大きなデッキなどのユニークな特徴も、建築費が高くなる要因でしょう。
グレード(品質)
住宅のグレードは、その材料の品質とデザインによって決まります。
例えば、御影石のカウンタートップやハードウッドのフローリングなど、ハイグレードな素材の住宅は、合成カーペットやラミネートカウンタートップなど安価な素材の住宅よりもコストが高くなります。
さらに、カスタムメイドの造作やユニークなデザイン要素など、複雑な職人技が施された住宅は、標準的な建材で建てられた住宅よりも建設費がかさむでしょう。
利益率
利益率も建設費用に大きく影響します。
例えば、建築のビジネスモデルや提供するサービス内容、生産量、地方や首都圏といった地域面により、費用に変動が見られるでしょう。
また、大手のハウスメーカーと工務店など、依頼先によっても大きく異なります。
建設費の費用相場|物件別
それでは、代表的な建築物の費用について以下3つの建物別に紹介していきます。
- マンション
- 戸建て
- ビル
マンション
基本的にマンションを建てる際の費用は、「構造ごとの坪単価」になります。
厚生労働省が発表した「建築着工統計調査(2020年)」によると、マンション(共同住宅)の建設費は下記の通り。
構造 | 坪単価 | |
SRC造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 約90万 |
RC造 | 鉄筋コンクリート造 | 約85万 |
S造 | 鉄骨造 | 約80万 |
出典:国土交通省 統計表名「(新築住宅)利用関係別、構造別、建て方別(住宅の工事費)/戸数、床面積、工事費予定額、1戸あたり工事費予定額、1平米あたり工事費予定額」
日本のマンションの平均的な建設費用は、土地面積80坪かつ5階建ての規模感なら2〜3億が相場と言われています。
一方で、規模やデザイン、使用する材料や労働力の質など、価格はいくつかの要因によって決まるため、大きく下回ることも少なくありません。
マンションは、規模感が大きくなればなるほど、建設費は高くなります。大きな建物であれば、完成までに必要な材料、労働力、時間が増えます。
また、使用する材料の品質も、マンションのコストを決定する際に考慮しなければいけません。良質な材料の使用により、いいマンションは建設できますが、その分コストも上昇はいたしかないでしょう。
また、特定の地域では材料や労働力がより高くなるため、地理的な位置もマンションの建設コストに影響します。
戸建て
次に、戸建ての相場を見ていきましょう。
国土交通省の調査で、注文住宅で土地も同時に購入した場合・建て替えをした場合(土地は既に購入済)の平均費用が公開されています。
土地購入の有無 | 建設費用の平均 |
土地と住宅を同時に購入した場合 | 4,615万円 |
住宅のみ購入・建て替えをした場合 | 3,555万円 |
出典:国土交通省「令和元年度住宅市場動向調査報告書」
住宅のみの購入で考えても、3,000万円が平均となります。
また地域ごとに比較しても平均は異なり、首都圏や近畿、東海でも相場が変動します。
エリア | 土地代 | 建築費 | 合計 |
全国平均 | 約1,445万円 | 約3,010万円 | 約4,455万円 |
首都圏 | 約2,221万円 | 約2,912万円 | 約5,133万円 |
近畿圏 | 約1,693万円 | 約2,965万円 | 約4,658万円 |
東海圏 | 約1,274万円 | 約3,105万円 | 約4,379万円 |
その他の地域 | 約912万円 | 約3,068万円 | 約3,980万円 |
参考:住宅金融支援機構「2021年度 フラット35利用者調査(2022年8月2日 国際・調査部 調査グループ)」
戸建てに限らず、都市部に近い地域であればあるほど、金額は高い傾向にあるでしょう。
ビル
では最後に、ビルをご紹介します。
ビルも基本的にはマンションと同様「構造ごとの坪単価」で相場を考えられます。
構造 | 坪単価 | |
SRC造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 約134万 |
RC造 | 鉄筋コンクリート造 | 約119万 |
S造 | 鉄骨造 | 約97万 |
出典:国土交通省 統計表名「(表番号3) 用途別、構造別/建築物の数、床面積、工事費予定額」
ただし、通常のオフィスビルやテナント・雑居ビル、高層オフィスビルと種類によって金額も大きく変動します。
テナントや雑居ビルなら坪単価65〜90万円ほどのレンジであるのに対し、高層オフィスビルは90〜150程度となります。
建設するビルによっても異なる点は把握しておきましょう。
近年における建設費の推移
また、近年では建設費が上がっているというデータがあります。
下記は、国土交通省によるとした「年度次 建設工事費デフレーター(2015年基準)」のデータで、2015年を基準(100)とした建設費の推移を表しています。
2012年度 | 94.1 |
2013年度 | 96.5 |
2014年度 | 99.8 |
2015年度 | 100.0 |
2016年度 | 100.3 |
2017年度 | 102.2 |
2018年度 | 105.5 |
2019年度 | 108.0 |
2020年度 | 107.9 |
2021年度 | 112.9 |
建設費の上昇は、東日本大震災後の復興需要の増加、資材や人件費などの高騰が原因だと考えられています。
建設費は、今後も値上がりしていくと予想されますので、物件の建築時には不必要なコストはできるだけカットされる恐れもあるでしょう。
まとめ:建設費の構成や費用相場をきちんと理解しよう
建設費は、建物の大きさや資材の品質、地域やビジネスモデルなどさまざまな要素で決定されます。直接工事費と間接工事費で分けられるため、各費用の違いもおさえておきましょう。
建物の種類によっても、必要な建設費は異なるため、適切な建設費用を把握しておいてください。