この記事ではそもそも共通仮設費はどのような費用なのか?
どのように共通仮設費を計算すれば良いのか、内訳や具体的な計算方法について詳しく解説していきます。
積算をする際に共通仮設費は重要なポイントになりますので、しっかりと理解しておきましょう。
この記事の内容
積算における共通仮設費とは
共通仮設費と直接仮設費を合わせて、「仮設工事費」といわれています。
共通仮設費とは仮設工事費の一部なのです。
直接仮設費は建物を建てるために直接必要な足場や養生を設置撤去するための費用です。
一方で、共通仮設費とは建物本体を建てるためには直接関係がないものの工事を進めていくために必要な仮設物の設置撤去のための費用となります。
例えば、共通仮設費とは荷物を吊り上げるクレーン車の費用、周辺警備を担うガードマン費用、工事の安全性を高めるための敷地の仮囲い費用、近隣への騒音対策での防音シートの設置費用などです。
共通仮設費の内訳
共通仮設費の内訳は以下の8項目に分類されます。
- 準備費
- 仮設建物費
- 工事施設費
- 環境安全費
- 動力用光熱費
- 屋外整理清掃費
- 機械器具費
- その他
共通仮設費として使われるものは、工事が終わってしまえば形として残らないものです。
または直接的に建物工事に関わらないが、工事全体を進めるために必要な費用と考えるとイメージしやすいでしょう。
以下、詳しく見ていきます。
準備費
準備費とは建物の工事に入る前に、事前準備を行う際に必要な費用です。
例えば、着工前の調査や測量、作業をスムーズに行うための伐根や草刈り、整地などに必要な費用が計上されます。
また工事をする上で必要な運搬や廃材などの処分費用も準備費として認められます。
つまり現場で作業をしやすくするために必要な費用です。
仮設建物費
作業員が利用する工事用の施設を作る際などに必要な費用です。
工事を行う際に現場の作業員が利用する設備や、監理事務所や現場事務所を敷地内に建てるとき必要な費用が計上されます。
似ていますが現場の環境改善の費用は仮設建物費に含まれない点に注意しましょう。
工事施設費
工事をスムーズに行うために工事用の道路や敷地の仮囲いなど工事用施設に必要な費用です。
工事用の施設を作ることで現場の作業員は工事をやりやすくなります。
環境安全費
現場にて安全に工事を施工するために必要な費用です。
例えば消火設備の施設の設置や安全管理のための警備員や安全標識、隣接物を保護するための養生や落下防止の安全用シートの費用等が計上されます。
動力用光熱費
工事を行うために必要な電気料金や水道料金、また電気設備や給排水設備に必要な費用です。
他にも機械の燃料やガス代なども計上することができます。
屋外整理清掃費
屋外や周辺の清掃やゴミ処理に必要な費用です。
そのほかにも片付け費用や廃材を処分する費用、除雪費用等を計上することができます。
機械器具費
測量するための器具やクレーン器具、雑機械器具など、工事をするにあたって必要な機械器具に関する費用のことです。
機器を上手く使うことで効率的に工事を進めることができます。
その他
建築の際に使用する材料や製品の品質を調査するために必要な費用や、条件を満たす中で上記の7項目に該当しない費用を計上することが可能です。
共通仮設費と共通費の違いとは?
共通費とは「一般管理費」「現場管理費」「共通仮設費」という3つの費用で構成されています。
いずれも直接的ではなく、間接的に工事に必要となる費用です。
一般管理費は間接部門の給与や事務所費用等、現場管理費は建築工事中に工事の管理に必要な費用になります。
つまり共通費は間接的に工事に必要となる費用全体を表しますが、共通仮設費はその中の一部ということです。
そして上記で説明したように共通仮設費には8つの項目があります。
なお、一般管理費と現場管理費については以下で解説しています。
工事における一般管理費とは?2022年に改訂された一般管理費率と併せて解説 積算で重要な現場管理費について内訳や重要性を解説!共通仮設費の計算方法1:内訳をひとつずつ計算する
共通仮設費の計算方法には2つの方法があります。
1つ目は、上記で説明した個別の費用をそれぞれ算出しひとつずつ計算する方法です。
つまり8項目それぞれの費用を算出し、合計するのです。
こちらの計算方法はシンプルで分かりやすいですが、手間がかかりやすくなっています。
共通仮設費の計算方法2:共通仮設費率を用いて計算する
2つ目は、共通仮設費率を用いて計算する方法です。
共通仮設費率は工事の種類によって上限と下限が定められていて、共通仮設費率算定式により計算された割合の事をいいます。
計算方法
具体的な計算方法は以下の通りです。
共通仮設費=直接工事費×共通仮設費率+共通仮設費率に含まれない費用
共通仮設費に含まれない内容は別途計算し、加算する必要があります。
しかし、共通仮設費にはいろいろな費用が含まれているため、おおよそで計上するための率分となっており、各積算基準に掲載されています。
直接工事費 | 適用範囲 |
---|---|
1,000万円以下 | 4.34%~6.27% |
1,000万円を超える場合 | 8.525×P-0.073279~12.311×P-0.073279 |
以下の式によって共通仮設費を計算することが可能です。
Kr=16.331×P-0.200×T0.421
- Kr:共通仮設費率(%)
- P:直接工事費(千円)
- T:工期(月)
共通仮設費率の算定方法
共通仮設費率の算定方法について説明します。
まず直接工事費が1,000万円を超えるか超えないかを確認しましょう。
そして以下の式に合わせて計算します。
計算式は 「Kr=各工事の係数×P^各工事の係数×T^各工事の係数」となります。
工事の種類によって7項目に分かれている点に注意しましょう。
新営建築工事
新しく建物を建てる工事の場合の数字をみてみましょう。
直接工事費 | 適用範囲 |
---|---|
1,000万円以下 | 3.25%~4.33% |
1,000万円超 | 4.34×P^0.0313%~5.78×P^0.0313% |
計算式は「 Kr=7.56×P^-0.1105×T^0.2389」です。
改修建築工事
建物の修理や修復を行う工事の場合の数字をみてみましょう。
直接工事費 | 適用範囲 |
---|---|
500万円以下 | 3.59%~6.07% |
500万円超 | 6.94×P^0.0774%~11.74×P^0.0774% |
計算式は「Kr=18.03×P^-0.2027×T^0.4017」です。
新営電気設備工事
新しい建物での電気設備工事を行う場合の数字をみてみましょう。
直接工事費 | 適用範囲 |
---|---|
500万円以下 | 3.90%~7.19% |
500万円超 | 9.08×P^0.0992%~16.73×P^0.0992% |
計算式は「 Kr=22.89×P^-0.2462×T^0.4100」です。
改修電気設備工事
既存施設の修理や修復に携わる電気設備工事の数字をみてみましょう。
直接工事費 | 適用範囲 |
---|---|
300万円以下 | 1.91%~5.21% |
300万円超 | 3.10×P^0.0608%~8.47×P^0.0608% |
計算式は「Kr=10.15×P^-0.2462×T^0.6929」です。
新営機械設備工事
新規の機械の設備工事を行う場合の数字をみてみましょう。
直接工事費 | 適用範囲 |
---|---|
500万円以下 | 4.86%~5.51% |
500万円超 | 10.94×P^0.0952%~12.40×P^0.0952% |
計算式は「Kr=12.15×P^-0.1186×T^0.0882」です。
改修機械設備工事
既存機械の修理や修復に携わる工事の数字をみてみましょう。
直接工事費 | 適用範囲 |
---|---|
300万円以下 | 1.73%~4.96% |
300万円超 | 2.44×P^0.0433%~7.02×P^0.0433% |
計算式は「Kr=12.21×P^-0.2596×T^0.6874」です。
昇降機設備工事
エレベーターやエスカレーターなどの設備工事の場合の数字をみてみましょう。
直接工事費 | 適用範囲 |
---|---|
1000万円以下 | 3.08% |
1000万円~5億円 | 算定式による |
5億円超 | 2.07% |
計算式は「Kr=7.89×P^-0.1021」です。
(参照:いずれも国土交通省)
まとめ
この記事では積算においてどのように共通仮設費を計算すれば良いのか、内訳や計算方法について解説しました。
共通仮設費は直接建物の工事にかかる費用ではありませんが、全体の工事の中では必要な費用です。
該当する8つの項目や共通仮設費率の算定方法についても詳しく説明しました。
共通仮設費は重要なポイントですので、積算に携わる方はしっかりと理解しておくことをおすすめします。
複雑な計算式もありますので、積算ソフトを上手く利用することも重要でしょう。