左官工事の見積書の作成方法

左官工事の見積書の作成方法

左官工事とは

左官工事とは、建物の壁や床、塀などをコテを用いて塗り仕上げる工事を指します。使用する素材は土、砂、石灰、セメント、モルタル、しっくいなどが代表的なものです。
左官工事は使用する素材によって工程、技術まで変わってくるため、見積書もそれを踏まえて作成する必要があります。

また、左官工事の手順は一般的な木造住宅の壁左官工事の場合、

1 下地工事
2 下地・仕上げ工事
3 塗り・仕上げ工事

と大きく3段階に分かれます。

左官工事の見積書作成の手順

左官工事の見積書作成の一般的な流れは以下の通りです。

1.数量拾い

図面から数量や枚数を算出すること。数量や枚数に応じて作業手間が変わり、見積にも影響があるため、正確な数量拾いが重要となります。

2.作業環境の確認・想定

職人さんが現場で作業するときの環境の確認。現場が建物の内部なのか外部なのかはもちろん、足場の有無や作業スペースの確認も重要です。例えば足場がなければ自分たちで足場を組む必要があり、それは見積にも影響が生じます。

3.作業手間の算出

左官工事そのものの作業手間だけでなく、作業環境の確認に伴って発生する作業の手間の算出も必要となってきます。

4.材料算出

材料自体の単価に加え、材料によって作業の手間や技術、スピードが変わってくるので、それを加味した算出が必要となります。

見積と実際の金額の差異を最小限にするために、特に「作業環境の確認」と「作業手間の算出」の項目が職人さんの目線で見たときに的外れになっていないことが重要です。

見積作成には図面を正確に読むことと、現場への理解や経験が必要と言えそうです。

左官工事見積作成のポイント

先にご紹介した手順の中で、注意したいポイントをご紹介します。

・数量より枚数を見る

「数量×単価」で単純に見積金額を算出できない場合があります。例えば100㎡の壁を左官工事する場合でも、一枚の大きな壁に塗るのか、柱で区切られた複数枚に塗るのかで作業手間も時間も大きく異なります。貫伏せやちり回りの納めなど寸法単位での作業が増えるためです。1枚あたりの面積は小さくても、枚数が多かったり、形が複雑なケースの場合、相当の割り増しを考えておかなくてはならないでしょう。

・養生費について

左官工事では必ずバケツなどを持って現場内を職人さんが移動します。作業環境によっては部屋全体だけでなく廊下にも養生が必要になるなど、養生の必要な範囲を割り出す必要があります。その費用は左官工事内の必要経費として表示しますが、左官以外のメインの工事に関わる場合には共通仮設工事に組み込んでもいいでしょう。

左官工事見積作成の具体例

手順や注意点を踏まえ、一般的な規格・仕様として考えられるサンプルを列挙しながら、見積の具体例をご紹介します。

材料や工程、各仕様ごとに項目を分けて記載します。「作業環境」と「作業手間」による価格設定は、見積上別途項目に分けずに「ブラスター塗り」などの各項目の中に予め盛り込むことが多いです。

No 名称 規格・仕様 単位 数量 単価 金額
8 左官下地・仕上げ工事
下地調整 合成樹脂溶剤系シーラー
石膏ボード、合板
1 500 500
ブラスター塗り ALC用特殊ブラスターA種
塗厚3ミリ
1 2500 2500
ブラスター塗り ALC用特殊ブラスターB種
塗厚5~7ミリ
1 3000 3000
ラスモルタル塗り 波形ラス下地2回塗り
既配合 塗厚16ミリ
1 4500 4500
ラスモルタル塗り 波形ラス下地2回塗り
現場配合 塗厚20ミリ
1 5000 5000
石膏ブラスター塗り(中塗り仕上げ) コンクリート下地
下塗り10ミリ+上塗り5ミリ
1 4000 4000
石膏ブラスター塗り(中塗り仕上げ) ラスボード下地、塗厚10ミリ
※ボード張り別途
1 3300 3300
石膏ブラスター塗り(中塗り仕上げ) 石膏ボード下地
下塗り10ミリ+上塗り5ミリ
※ボード張り別途
1 2500 2500
    <項目について>

  • 「No」・・・見積書の通し番号。
  • 「名称」・・・工事項目・作業内容。
    「名称」欄の一行目には「左官工事」ではなく、左官工事の中で該当する手順や、作業場所などを記載します。例では「左官下地・仕上げ工事」となっています。
    二行目以降では材料や工程ごとに、その名前が表示されるように項目を分けて記載します。
  • 「規格・仕様」・・・使用する材料の規格や仕様。メーカーや品番、厚みなどの寸法を記載します。
  • 「単位」「数量」・・・単位は全て㎡で統一します。「一式」という単位や数量での表示は避け、詳細を記載します。

まとめ

左官工事の見積書の作成は、作業環境や手間の見極めが必要になり、同じ見積はなかなかありません。知識や経験が問われる業務と言えるため、ケースによっては専門家を頼るのも一つの方法と言えそうです。