積算における歩掛とは?計算方法やメリットなど解説

歩掛

積算を行う上で、歩掛はどのような数値なのでしょうか。

その計算方法やメリットについて、積算の仕事を始めて経験が浅い方にも分かりやすいように説明致します。

現在積算の仕事を担当されていて、スキルアップの為転職を考えている方も、ぜひ本記事を参考になさってみてはいかがでしょうか。

2022年最新の建設業界動向について

2022年最新の建設業界動向について

建設業界の技術や工法は日々進化し続けており、進化に対応しながら、正確な積算を行う必要があります。

災害被害の復旧や復興に加え、内閣官房では災害への備えとして、国土強靭化基本計画を推進。

災害被害を最小化するための取り組みを掲げており、今後も公共工事は堅調に推移すると考えられます。

また2024年には建設業界でも時間外労働の上限規制が設定されるため、残業時間について厳しく管理されることになるでしょう。

今後さらに準備を進めていく企業が増えていきます。

人手不足感はより高まり、人材確保の動きはより強くなるものと考えられます。

積算を仕事とする皆さんも、働き方の改革を検討し、よりよい労働環境を求めて転職を実現する機会に恵まれるかもしれません。

(参考:厚生労働省 時間外労働の上限規制

歩掛の概要と計算方法

歩掛の概要と計算方法

歩掛とは、工事の方法や難しさなどで異なる作業に掛かる手間を数値化したものです。

適正な金額の見積もりを行う上で歩掛は欠かせません。

例えば、物品費であれば、「品物の単価×個数」でシンプルに計算することができます。

しかし、人が作業を行う場合の労務費は、作業時間だけを元に計算すると正確さが損なわれます。

なぜなら、同じ時間作業しても、工事の方法や難しさによっては作業量が違うため、見積もりを作成する条件が大きく変わってしまうためです。

歩掛を利用することで、明確な根拠を元に、現場に合った適正な見積を作成できる可能性が高くなるでしょう。

歩掛の計算方法や注意点

歩掛の計算方法や注意点

歩掛から計算する作業量の単位を人工(にんく)と呼びます。

例えば、1人の作業スタッフで8時間かかると考えられる作業量は1人工です。

人工=(スタッフの数×必要作業時間)÷8時間

つまり2人で4時間かかる作業量は1人工、同様に、4人で6時間かかる作業量は3人工となります。

歩掛を使って労務費を計算する時は以下の式で計算することができます。

労務費=作業量×該当作業の歩掛×労務単価

ただし、歩掛は現場の状況や使用する材質、作業の工程などによって変わる点に注意が必要です。

実際には国土交通省によって公表されている、「公共建築工事標準単価積算基準 」を確認して、多くの会社が「標準歩掛」を定めています。

実は様々な省庁が1つの作業ごとに違う歩掛を定めているため、労務費の計算はかなり大変です。

(参考:国土交通省 公共建築工事標準単価積算基準 令和4年3月24日制定

標準歩掛はどのように決まる?

標準歩掛はどのように決まる?

次に標準歩掛について説明します。

国土交通省が定めている「標準歩掛」ですが、どのように決めているのか見ていきましょう。

ポイントは以下の4つです。

  • 作業者の年齢
  • 作業者が取得している資格
  • 作業者が従事する仕事の経験年数
  • 標準歩掛は自社の状況に合わせて調整する

それでは詳しく見ていきましょう。

作業者の年齢

作業者の年齢が標準歩掛の設定基準となっています。

標準歩掛の設定は健康な青年・壮年をイメージしているため、自社のスタッフが高齢の場合や若年層のスタッフが多い場合などには調整が必要です。

作業者が取得している資格

作業現場には各専門の有資格者を必ず1人配置する必要があります。

資格があるのかないのか、自社スタッフの中に何人の資格保持者がいるのかによって、歩掛が変わってきます。

そのため歩掛を計算する際には、作業に入るスタッフが持っている資格についても事前に確認しておくことが重要です。

作業者が従事する仕事の経験年数

標準歩掛は仕事の経験年数によっても定められています。

現場での経験年数が豊富なベテランのスタッフと入社したばかりの経験が浅い新人スタッフでは仕事のスピードが大幅に違うため、歩掛も異なっています。

スタッフの経験を勘案して、別途歩掛を計算する必要があるでしょう。

標準歩掛は自社の状況に合わせて調整する

標準歩掛は自社のスタッフの状況に合わせて調整することが大切です。

国土交通省が定めている標準歩掛と自社の状況との間には差があることを理解しておきましょう。

標準歩掛と自社の歩掛の差を正確に調整することがとても重要です。

歩掛を利用するメリット

歩掛を利用するメリット

次に歩掛を利用するメリットについて説明します。

具体的には以下の5つのメリットを紹介します。

  • 赤字工事の回避につながる
  • 利益向上につながる
  • スケジュール管理に活用できる
  • データ分析から経営強化につなげられる
  • 積算の根拠を示しやすくなる

それでは詳しくみていきましょう。

赤字工事の回避につながる

歩掛を用いて適正な見積もりを作成することで、収支がマイナスになる工事を避けることに繋がります。

大雑把な内容で見積もりを作成すると一つ一つの項目ごとに僅かな差が生まれ、積み重なっていくことで大きな差となります。

原価が定まっていない工事でも正確な見積もりを作成することで損をしてしまう状況を防ぐことができるでしょう。

利益向上につながる

歩掛を利用すると、利益向上につながります。

工事は現場によって状況やスタッフが異なり、労務費を正確に計算することが難しいため、どれだけ労務費を正確に見積もりできるかが重要なポイントです。

歩掛を利用することで、自社の状況を理解できるため、さらに利益率アップにつながることでしょう。

スケジュール管理に活用できる

見積作成時には数字の羅列になるため、どのくらいの工数になるのかよくわからない状況になりがちです。

歩掛を利用することで、正しい工数を理解でき、スケジュール管理に活用することができます。

工数を管理することで、トラブルや荒天の影響で工期に乱れが出たときも、工程表を柔軟に変更させつつ対応することが可能になります。

スケジュールという流れの中で見積もりについて検討すると、内容に無理があることや、工期が難しいことなど、判断することができるでしょう。

大きな現場ほどイレギュラーな事柄が発生しやすいので、しっかりとスケジュール管理を行う必要があります。

データ分析から経営強化につなげられる

歩掛により、データ分析が行いやすくなり、経営強化に繋げることが可能です。

自社の正しい歩掛を理解し、経営へと情報を反映させていくことで、より正確に管理することができます。

その結果として、自社の事業データを拾い出し、分析することにより、会社の長所や短所を理解できます。

更に仕事の効率を高めていくためには、様々な歩掛を登録し自動計算できる積算システムもありますので、導入を検討してみるのも一手です。

積算の根拠を示しやすくなる

歩掛を利用することで、積算の根拠を示しやすくなるでしょう。

発注者から見積もりの根拠を聞かれた際にも、納得感のある根拠を示すことができれば、発注者との関係性も深まります。

値引き交渉などの際にも、安い単価の商品に変更することで価格を下げることができる、など具体的に対応することが可能です。

まとめ

まとめ

この記事は歩掛がどのような数値なのかという基本的な知識から、その計算方法やメリットについて、積算の経験が浅い初心者にも分かりやすいように説明してきました。

積算は工事内容や自社の事を理解することで、より高い精度で見積もりを行うことが可能になります。

現場の状況に応じて臨機応変に対応していくこともとても大切です。

国土交通省が公表している標準歩掛と自社の状況の差を理解して、適正な価格で見積もりを作成することができる優秀な積算担当者を求める企業は数多くあります。

現在積算の業務を担当されている方も、本記事がスキルアップの一助となると幸いです。